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避難計画作り進まず 渋滞対策など苦慮 対象13市町村 策定4市町のみ 県は計画公表

■対象13市町村 策定4市町のみ 県は計画公表

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から11日で3年5カ月を迎える。県内では復旧が一歩一歩進む。一方で、原発から半径30キロ圏内など原発周辺の13市町村が事故に備え定める避難計画作りが進んでいない。県によると、策定済みはいわき、南相馬、川俣、広野の4市町にとどまる。県が5月に公表した広域避難計画を基に、市町村が具体的な避難ルートなどを設定する手法だが、帰還時期や円滑に避難するための道路整備、渋滞対策が見通せないためだ。さらに、放射性物質の拡散状況は風向き一つで変わり、計画があらゆる事態から住民を守れるのかという課題も浮上している。福島第一原発は今も廃炉作業に伴う汚染水の発生など不安定な状態が続く。避難計画策定の遅れに住民は不安を隠さない。

 原発事故に備えた避難計画を策定したいわき、南相馬、川俣、広野の4市町。後追いで県が広域避難計画を示す形となったため、県の計画と整合性が取れないケースや、福島第一原発事故で避難している住民への効果的な周知方法を見い出せないなどの課題を抱える。
 原子力規制委員会の原子力災害対策指針は、避難対象市町村を原発から半径30キロ圏としている。本県は福島第一原発の廃炉作業など他県と異なる事情があるため、県は原発から30キロ圏の12市町村に、避難区域を抱える川俣町を加えた13市町村を対象とした。
 県は4月30日に原子力災害に備えた初の広域避難計画を公表した。県の広域避難計画を受け、避難対象市町村はそれぞれ、詳細な計画を策定する手順となっている。具体的な避難ルートの設定では、市町村に対し高速道路や緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の利用を前提に、放射性物質の拡散状況に大きな影響を与える風向きにも考慮した柔軟な対応を求めた。県は「帰還の見通しがまだ立っていない自治体もあるため、策定の期限は設けない」としている。
 避難ルートの道路整備や、段階的な避難の方法、具体的な渋滞対策は市町村に委ねられた。原発事故で想定されるあらゆる事態に対応した避難計画を策定する作業が容易ではなく、市町村の避難計画策定を遅らせている。
 県の広域避難計画で定めた避難対象市町村と避難先となる市町村は【表】の通り。平成22年の国勢調査の人口統計でまとめた。避難者総数は54万9900人で、半数以上の28万8100人が茨城県に向かう。県内の46市町村には26万1800人が避難する。
 原発事故発生後の避難状況を反映した実際の人口に基づく計画も示した。この場合、広野町は人口が2300人で避難先は小野、浅川の2町になる。楢葉町は人口1000人で、受け入れ先は会津美里町だけになる。
 策定に当たっては、同一市町村の住民が分散しないように、避難先が複数市町村になっても隣接するように配慮した。茨城県内の受け入れ市町村は今のところ未定で、今後、両県で調整する。
 国道と県道を利用した市町村別の避難ルートも公表した。また、県は計画に基づき、原発から30キロ圏内の住民が避難した場合の所要時間の推計結果を明らかにした。圏内の住民の90%が圏外に避難するまでの時間は、段階的に避難指示を出すと3時間45分で終えるのに対し、一斉に避難すると最短でも6時間半は必要だとした。
 県は「段階的な避難の方が渋滞も緩和され有効」とみて、指示の出し方などを検討する方針。

■市民の意見を反映 いわき市

 いわき市は平成26年3月の県地域防災計画原子力災害対策編の改訂に基づき、広域避難計画の策定作業を進めている。市民の意見を踏まえた計画作りに向け、7月から事故発生当時の市民の避難行動や、現在の避難に対する意識を把握するため、市民3000人を対象にアンケートを実施した。県の広域避難計画との整合性を取り、アンケートを踏まえた素案を来年1~2月ごろ市民に説明し、意見公募する。
 25年3月にまとめた暫定的な原子力災害避難計画では、避難対象区域は福島第二原発から概ね30キロ圏内とし、平、四倉、久之浜・大久など地区ごとに避難経路のパターンを設定した。主に市内の避難所に移ることとした。さらに広域になった場合は、市外への避難が必要となることから、県と調整するとしていた。

■避難先を県と調整 南相馬市

 南相馬市は県の広域避難計画策定に先立ち、平成25年12月に市原子力災害避難計画を決めた。
 計画では福島第一原発事故発生時の住民の避難状況を踏まえ、避難先を宮城、山形、新潟の3県とした。宮城県には鹿島区の八沢、鹿島、真野、山形県には原町区の高平、太田と鹿島区の上真野、新潟県には原町区の原町、石神、大甕の住民が避難するとした。
 しかし、4月に県が公表した広域避難計画では、同市の住民の避難先を近隣の県内市町村に設定したため、市計画とは食い違いが生じた。市と県は避難先について調整を進めている。
 その後の調整で、住民は外部被ばく線量を調べるスクリーニングなどを経てバスや自家用車で、まず県内の避難先に移動。県内の避難先が複合災害などで利用不能となった場合に、二次的な避難先として県外に向かう方向で協議が進んでいる。

■全町民に冊子配布 広野町

 広野町は平成24年7月、「防災のしおり『原子力防災編』」を策定、全町民に配布した。
 一時避難場所は広野小とし、二次避難先として小野、石川、浅川、平田の4町村を掲げた。さらに県外では、埼玉県三郷市、静岡県伊東市も挙げている。三郷市とは常磐自動車道で結ばれている縁で、20年7月に災害時相互応援協定を結び、交流している。
 伊東市とは、同市在住の町出身者が橋渡し役となり、震災時に一部の町民が避難した。23年7月には同市と災害時相互応援協定を結んだ。
 二次避難場所への移動は町がバスを用意する。どこに避難するかは町が決定し、防災無線などで伝達する方針。高齢者など、要介護者は一次避難場所まで町が搬送する。
 町は震災で全町民が避難し、今も人口約5200人のうち半数が隣接するいわき市などに避難している。避難者に対し、どのように伝達するかが課題となっている。

■見直し作業進める 川俣町

 川俣町は昨年12月、原子力災害避難計画の暫定版を策定した。ただ、安定ヨウ素剤の服用時期やスクリーニングなど重要な項目が未定となっている。さらに県が4月に公表した広域避難計画に沿って避難先を変更しなければならず、抜本的な見直しを進めている。
 暫定版では避難先を福島と二本松、伊達、本宮、桑折、国見、大玉の7市町村とした。しかし県の計画では川俣町の避難先は福島と伊達、桑折、国見の4市町に定められた。受け入れ自治体と協議して約100カ所ある避難所への移動経路を選定している。
 課題は渋滞予測が難しい点だ。双葉郡や相馬郡からの避難者がどの程度、川俣町を通過するのか見通すことができない。このため混雑が起きにくい国道や県道など主要道路を中心に避難ルートとする予定。
 安定ヨウ素剤とスクリーニングの場所については、国と県が指針を示すのを待っている状態。町の担当者は「できる限り早期に示してほしい」と訴えている。

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