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【廃炉作業続く第一原発】津波対策後回し 汚染水海洋流出を懸念 凍土壁やALPS 目先の対応優先

応急的に設置された東京電力福島第一原発の仮設防潮堤(東電提供)

 廃炉作業が続く東京電力福島第一原発は、津波による放射性物質の海洋流出を防ぐための十分な対策が講じられていない。原子力規制委員会は原発事故から3年余りが経過した今月、流出が以前から懸念されていたとして、9月にも東電に対応を求める方針を打ち出した。政府と東電が原発事故発生から3年以上、津波対策を後回しにしていた状況に、避難住民らは対応の遅れを批判する。

■規制委の指摘 
 「はらはら見守っているのが実情。なるべく早く(対策を)実施してもらいたい」。7月に開かれた規制委の定例会合で地震や津波などを専門とする島崎邦彦委員は、福島第一原発の地震・津波対策を本格的に検討してこなかった現状への懸念を口にした。
 福島第一原発では、海側にあるトレンチ(ケーブルなどの地下管路)内に大量の高濃度汚染水が滞留。2、3号機のタービン建屋につながるトレンチ内だけで約1万1千トンに上る。東電はトレンチ内の汚染水の抜き取りを目指し、凍結止水工事を進めているが、水温が想定より下がらず難航している。
 規制委は今になって敷地が津波で浸水した際にトレンチ内などにたまった汚染水が海に流れ出るリスクを指摘。9月までに東電に津波対策を施すよう指示することを決めた。
 規制委をはじめ、政府、東電は汚染水から大半の放射性物質を取り除く多核種除去設備(ALPS)の試運転、凍土遮水壁着工など目の前の汚染水対策に追われ、津波への対応が置き去りになった。津波が凍土遮水壁などの汚染水対策にもたらす影響も不透明だ。

■応急措置 
 東電は原発事故発生後、応急措置として平成23年6月に砕石を詰めた袋を積み上げ、高さ14メートルの仮設防潮堤を設置。非常用の仮設電源や消防車などを高台に移した。
 東電は「東日本大震災と同規模の地震・津波に対応できる準備はしている」と安全性を強調。一層の対策が必要とする規制委の議論については「まだ規制委から指示を受けていないので対応は未定」としている。

■帰還への影響も 
 楢葉町の住職早川篤雄さん(74)は町内の自宅が避難指示解除準備区域にあり、いわき市で避難生活を送る。「汚染水対応に追われていたとはいえ、3年以上も国と東電が福島第一原発の津波対策を後回しにしていたのはあまりにもずさんだ」と批判。その上で「放射性物質が流出する懸念があるうちは、風評も消えないし、不安で帰還できない」と訴えた。
 県原子力安全対策課の渡辺仁課長は「以前から(十分な対策の)必要性は感じていた。県民の安心のためにも1日も早く万全な備えをしてほしい」と早急な対応を求める。

【背景】 
 東京電力福島第一原発は特定原子力施設に指定されており、従来より厳しくなった地震・津波対策を義務付けた新規制基準の対象から外れている。基準地震動(耐震設計の目安となる地震の揺れ)や基準津波は策定されておらず、東電は東日本大震災と同程度の「アウターライズ地震」の発生を念頭に置いて、津波を防ぐ仮設の防潮堤を設けている。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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