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【震災・原発事故復興需要】相双働き手不足深刻 雇用側から悲鳴 事業へ支障懸念の声

南相馬市が福島市で8月に開いた合同就職面接会。15社が参加したが、来場者は9人にとどまった

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復旧・復興需要などに伴い県内の働き手が足りない状況が続く中、相双地方の労働力不足が深刻化している。川内村が復興のシンボルとして建設した農産物栽培工場では増える注文に対応できない状況だ。建設業界からは「工事を請け負いたくても、入札に参加できるか分からない」と悲鳴が上がり、復興への支障を懸念する声も出ている。

■人を集めて...
 「人手が足りず、注文に対応できない」。川内村の川内高原農産物栽培工場「KiMiDoRi」の早川昌和社長(57)は嘆いた。昨年4月の操業開始から1年半を迎える。従業員不足が要因となり稼働率は約50%にとどまったままだ。
 完全人工光型水耕栽培施設を導入した工場では、フリルレタスやリーフレタス、ハーブ類の生産が続く。鮮度の良さや清潔感が評価されて、県内外のスーパーや飲食店などからの注文が増えている。社員やアルバイト従業員らが1日13人態勢で作業に当たっているが、全ての注文には応じられない状況だ。
 村は求人情報をまとめ村民に周知しているが、働き手の確保は難しいのが実情だ。早川社長は「従業員の体力は限界だ。行政は労働者を相双地方に集める施策を打ち出してほしい」と注文した。
 南相馬市の飲食店やコンビニエンスストアでは「アルバイト・スタッフ募集」という張り紙が目立つ。和風レストランまるまつ原町店の佐藤直樹店長(35)は「ぎりぎりの人数で回している」と現状を明かす。震災前は830円だった時給を最大1200円に引き上げたが、従業員は思うように集まらない。「年末年始の繁忙期に向け、従業員を確保できるか心配だ」

■お手上げ
 復興事業が本格化し、人材の奪い合いのような状況が続く相馬地方の建設業界。ある関係者は「今年度後半の事業が今後発注になるが、今の仕事で手いっぱい。お手上げだ」と入札に参加できない懸念を吐露した。
 南相馬市原町区の関場建設は技術職を中心とした従業員が不足し、常時15人ほど求人している。関場直隆副社長(43)は「増大した業務に対応するため、従業員の負担が大きい。人手不足が続けば業務の進捗(しんちょく)に響く」と話す。
 建築、土木工事の現場には法律で一級施工管理技士の常駐が求められる。掛け持ちできないため、管理技士の数に応じた現場数しか請け負えない。東京五輪を前に、人材は賃金の高いところに流れる傾向が出ており地方は苦境が続いているという。相馬地方建設業協同組合の石川俊理事長(53)は「公共事業削減で、建設業にとって厳しい時代が続いた影響もある。他地域の同業からの転籍による人材確保などでしのぐしかない」とする。

■わずか9人
 8月下旬に福島市で開かれた合同就職面接会。建設、製造、小売など南相馬市の有力企業を中心に15社が参加したが、来場者はわずか9人だった。
 南相馬市は今年度、市外での開催に乗り出した。市内事業所の労働力を広域から確保するためだ。「さまざまな就職面接会に積極的に参加しているが、反応は薄い」。ある業者はため息を漏らす。
 市は今後、年度内に3回ほど県内や隣接県の都市部で就職面接会を開き、雇用増を目指す。市商工労政課の担当者は「労働力不足が今後も続けば復興に影響が出る。広範囲からの人材確保は、市のみの対応では厳しい」と危機感を募らせ、国に対し震災被災地に労働力を集中させるための対策を求めた。

【背景】
 福島労働局によると、7月の県内の有効求人倍率(季節調整値)は1・43倍で、全国で5番目に高かった。このうち相双地方の7月の原数値は2・42倍で、14カ月連続で2倍台となっている。職業別の差も大きく、常用(雇用期間4カ月以上)は「事務的職業」の0・68倍に対し、「建設・採掘の職業」は5・96倍だった。福島労働局は、求職者数が減少傾向にあるため今後も有効求人倍率は下がりにくい状況が続くと分析している。

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