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新聞協会賞 本紙「原発事故関連死」キャンペーン 避難者救済へ徹底追及

■福島県関連死1753人 地震、津波死者の1603人上回る

 本県、岩手、宮城の被災3県の死者数(死亡届などを含む)のうち、関連死が占める割合は岩手、宮城両県が約8%にとどまっているのに対し、本県は約55%と突出して高い。本県の関連死は原則として市町村に設けられた審査委員会で認定作業を行っており、8月29日現在の認定数は1753人。地震や津波による直接死を大きく上回る。

 復興庁によると、今年3月末時点の3県の関連死者数は【グラフ】の通り。震災発生後1年を過ぎてから死亡した人は岩手が20人、宮城が16人、といずれも全体の数%なのに対し、本県は356人に上り、全体の21%を占めた。原子力災害による避難の長期化で、関連死は増え続けている。

 市町村別の関連死数は、南相馬市が最多の458人で、次いで浪江町の333人、富岡町の250人の順。若い世代や経済力のある避難者が仮設住宅を出て生活再建を進める一方で、長引く避難生活を悲観した人たちの自殺や仮設住宅での孤独死などには歯止めはかかっていない。原発事故に起因した関連死は社会問題となっている。

■新聞協会賞「原発事故関連死」キャンペーン 授賞理由

 日本新聞協会が9月3日に発表した福島民報社の「東日本大震災・東京電力福島第一原発事故『原発事故関連死』不条理の連鎖」の平成26年度新聞協会賞授賞理由は次の通り。

 福島民報社は、東京電力福島第一原子力発電所の事故により住民の避難が始まった直後の平成23年3月から、避難を強いられた県民やその家族の苦悩を追ったキャンペーン報道を続けている。

 一連の報道は、震災ではなく原発事故に起因した死があると主張、他の被災地にはない「原発事故関連死」という新たな言葉を作り出し原発災害が多くの県民の命を奪っている不条理を訴えた。自殺やアルコール依存症といった重いテーマに切り込み、実名で伝えた報道で、行政が光を当てない人々の存在を世間に知らしめた。

 依然として多くの県民が避難するなか、被災者の声なき声に耳を傾けた一連の報道は、地元紙の責務、役割を見事に果たしたものと高く評価され、新聞協会賞に値する。

※新聞協会賞
 昭和32年に創設。日本新聞協会に加盟する全てのマスメディアを対象に、そのマスメディアの全体の信用と権威を高めるような活動を促すことを目指して表彰する。賞は大きく「編集部門」、「技術部門」、「経営・業務部門」の3つに分かれる。編集部門には「ニュース」「写真・映像」「企画」の部門がある。協会賞受賞のマスメディア関係者は毎年新聞週間に開催する「新聞大会」で表彰される。

■実情に合わぬ国の認定基準

 関連死の認定手続き、災害弔慰金の支給業務に追われている市町村からは、原発事故に特化した基準などを国が示すよう求める声が上がっている。

 震災の発生後、国は新潟県中越地震で用いられた「長岡基準」を参考として都道府県に送付した。「発生後、半年以上経過すると、震災関連死ではないと推定される」という内容だ。一方、県内では原発事故による厳しい避難生活が長期化し、命を失う住民が後を絶たない。長岡基準では対応できないのが実情だ。

 現在までに400人以上の関連死を認定した南相馬市では、亡くなった住民の病状や避難の状況などを踏まえ、審査委員会が個別に判断している。担当者は「現在も認定作業は続いている。避難と死亡の因果関係の判断が難しいケースがあり、国や県に基準を示してもらいたい」としている。

■原発事故から3年5カ月経過 12万人超避難続く

 県内では原発事故から3年5カ月が過ぎた現在も、10市町村に避難区域が設定され、多くの住民が避難生活を強いられている。

 避難区域の状況は【図】、各市町村の区域別人口は4月1日現在【表】の通り。福島第一原発が立地し全町民が避難している大熊、双葉両町はそれぞれ帰還困難区域の人口が全体の96%を占め解除時期の見通しは立っていない。

 避難者は県内8万322人(8月13日現在)、県外4万5193人(7月10日現在)に上る。県外では東京都への避難者が6340人で最も多く、次いで山形県が4660人、新潟県が4142人となっている。

■ 教訓継承へ検証報道重要 県市長会長・相馬市長 立谷秀清氏63

 震災、原発事故で本県は大きな被害を受けた。発生直後の混乱の中、急な避難の影響で亡くなられた方も多く、大変残念だ。

 亡くなった人たちの無念に応えるため、しっかりと検証し、再発防止策を講じて復興を前進させていくことが大切だ。次の大規模災害に備え、しっかりと教訓を残していかなければならない。報道機関が災害関連死を見詰め続け、報道し続ける意義は大きい。

 医師としての立場で見詰め返すと、原発事故直後、医療現場では資機材や薬などが不足し、治療や看護が十分にいきわたらない混乱した状況があった。避難に伴い病院からの移送を余儀なくされ、環境の急激な変化に耐えられず病状を悪化させてしまった高齢者や有病者らがいた。いわゆる「災害弱者」が犠牲となってしまったケースが多かったように思う。

 陸路が寸断された際のヘリコプター輸送などによる救援物資の供給、前線の人員確保など事前の備えを構築しておくべきだ。急に避難することによってかえって患者のリスクが高まることもある。安全な輸送手段を事前に考えておくのも大切だ。災害関連死は人智をもって防げることが多いと思う。

■「声なき声」すくい上げて 県町村会長・湯川村長 大塚節雄氏70

 原発事故の影響を大きく受けている本県の状況は震災で被災した他県とは異なる。「原発事故関連死」として扱われるべきだ。

 原発事故災害は3年以上が過ぎた今も続いている。双葉郡の人たちを中心に古里を追われ、仮設住宅や借り上げ住宅などでの生活を余儀なくされている。避難者の日々のストレスは想像以上のものがあるだろう。特に原発周辺で古里への帰還が見通せない人の心の苦しみは計り知れない。

 「原発事故関連死」など本県の特殊事情をきめ細かく伝える報道は大切だ。原発事故の影響が続く以上、関連死が今後も増え続ける恐れがある。

 だが、原発から離れた地域ほど、時間の経過とともに関心は薄れていく。原発事故を風化させないために今後も伝え続けてほしい。

 一方で、報道は風評を引き起こす危険性も秘めている。原発事故の悪い面を強調するあまりに、事故前に戻りつつある部分がかすんでしまってはならない。

 これからも報道には声なき声をすくい上げ、表面的な事象に隠れがちな問題の掘り起こしを期待したい。その問題提起には国や県、人を動かす力がある。

■「関連死」不条理さ告発 国に対応迫る 原発事故に特化した制度を

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故による本県の震災関連死は、地震や津波による直接死を上回る事態となっている。福島民報社は今も増え続ける関連死を原発事故が原因となった「原発事故関連死」と位置付け、連載、特集などで遺族の苦悩、弔慰金制度の問題点などを追うキャンペーン報道を展開している。

■長期連載、苦悩報じる

 連載「原発事故関連死 ふくしまからの訴え」は原発事故によって避難を強いられ、命を落とした県民や家族の苦悩を報じた。

 「弔慰金」「損害賠償」「アルコール依存」「自殺」などテーマを設け、81回にわたり今も県民の命を危険にさらす原子力災害を検証している。

 現行の災害弔慰金制度は自然災害を前提にしている。国は原発事故による避難などに起因する死を「その他の異常な自然現象」によって死亡した場合に当たると拡大解釈し、原発事故と死の因果関係を矮小(わいしょう)化している問題点を指摘。市町村ごとに実施している関連死審査で認定判断に格差が生じている不合理さを訴えた。

 原発事故に伴う広域避難は長期化している上、避難による家族離散は、仮設住宅で暮らす住民が孤立する遠因になっている。避難住民の孤立化を防ぐための見守り活動が人員不足などで困難を極めている現状も伝えた。関連死を増やさない方策を探るため、医師や臨床心理士が避難住民に向き合う取り組みも報道した。

 一連のキャンペーン報道は原子力災害がもたらす重い現実を広く知らせるとともに、歴史に残し、国に対して対応策を迫る狙いがある。

 関連死の背景には、広域避難による急激な環境変化に起因した体調悪化、古里喪失の絶望感などがある。避難住民は帰還の見通しが立たない中、仮設住宅や借り上げ住宅など厳しい環境に身を置く。将来を見通せない不安と不便な生活が心労となり、避難住民を精神的に追い詰め、死期を早めている。原発事故に伴う強制避難により、古里に帰れずに命を落とした人は憲法が定める幸福追求権を阻害されたといえる。

 キャンペーン報道によって原発事故が多くの県民の命を奪っている事実を明らかにした。最愛の家族を亡くし、避難生活を続ける被災住民の生活再建につなげるためにも、原発事故に伴う関連死の認定基準の設定、弔慰金の額の見直しなどが求められている。こうした思いを基盤に紙面づくりを進めている。

■座談会で提言 随時特集掲載

 原発事故関連死を食い止めるため、弁護士や臨床心理士、自治会長、遺族出席による座談会も実施した。発言内容などから人的支援や全県的な関連死認定審査委員会設置の必要性を提言した。随時、関連死の現状を伝える特集も掲載している。

 また、仮設住宅で誰にもみとられることなく死亡する孤独死や関連死に関する損害賠償訴訟などの記事には「原発事故関連死」専用のカットを付けて報道している。

■認定基準に是正の動き

 原発事故は3年余りが過ぎた今も収束したとはいえず、自然災害を対象にした現在の災害弔慰金の支給基準では遺族救済につながらない現状を報じた。

 災害弔慰金は、かつて地震や津波などの直接死に対し支払われていた。平成7年の阪神大震災の際に仮設住宅で心労を抱え命を落とす住民が相次ぎ「関連死」の概念が生まれた。平成16年の新潟県中越地震で「災害から6カ月後は関連死ではないと推定される」とする「長岡基準」ができた。

 国は今回の震災と原発事故でも「長岡基準」に沿った対応を市町村に促した。しかし、県内市町村の関連死認定の審査委員会は、「長岡基準」にとらわれず、現在も関連死として多くの犠牲者を認定しており、報道の成果の一つといえる。

 さらに、審査委員会を原則として市町村ごとに設けたため、関連死の判断基準や自殺者の関連死認定などで、ばらつきが生じ、遺族の不公平感につながっている状況を報じた。全県的な審査委員会を県が設置する必要性を訴えたことで、県は市町村間の情報共有など被災者の不公平感を是正する関連死制度の検討に前向きな姿勢を示している。

■弔慰金制度の関心高まる 弁護士 新開文雄氏 62

 原発事故に起因した災害関連死に終わりは見えない。原発事故に特化した関連死認定の基準は、いまだに示されていない。原子力災害に見舞われた本県に見合った被災者救済制度の構築が急務だ。

 「原発事故関連死」報道は、原発事故による避難生活で命を失う県民の苦悩を伝え、制度の問題点を浮き彫りにした。情報を発信すると同時に、行政の課題を指摘している。

 特に、関連死認定に伴う弔慰金の支給制度を詳しく報じた。制度が原発事故に適応しているかどうか問題提起した意義は大きい。原発事故前までは広く知られていなかった制度に対する県民の関心が高まり、行政の適切な対応を促している。関連死をめぐる訴訟についても随時、報道し、弔慰金制度の認定に不満があれば最終的に訴訟で主張を認めてもらう方法を周知した。

 「原発事故関連死」という名称を定着させた。地元の報道機関として、避難者や家族を失った人々の苦悩を報道し続けていることが県民や行政が問題意識を持つことにつながっているのではないだろうか。関連死の防止につながる取り組みにも、さらに焦点を当てるべきだ。今後も県内の実情を粘り強く発信し続けてほしい。

■福島県特有の問題浮き彫り 臨床心理士 成井香苗氏 62

 原発事故から3年5カ月が過ぎたが、アイデンティティーを喪失した人々への支援の重要性は増している。彼らは貫いてきた生き方や仕事が原発事故で途切れた。自分が何者であるかという感覚が崩れた状態が今も続く。心のケアと同時に、人生の連続性を保つことができる職業の紹介など行政の的確なサポートが不可欠だ。

 「原発事故関連死」という言葉を浸透させた意義は大きい。原発事故による避難で大切な人を失った住民の納得できない思い、悔しさが鮮明に浮かぶ。記者たちが原発や放射線に不安を抱いて生活する県民と思いを共有してきたことが、報道からにじみ出ている。

 タイトルを軸に据え、関連死をとりまく制度、避難者が置かれた環境などを丹念に掘り下げた。それにより震災だけでなく、原発事故で被害を受けている本県特有の問題が浮き彫りになったと思う。社会が関連死に目を向けるようになったことが報道の成果だろう。

 地元紙として、原発事故による環境の変化に対応できず苦しんでいる人々の声を発信し続けてほしい。地域に密着した報道機関だからこそ、小さい声も聞こえるはずだ。

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