東日本大震災

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浪江の名物守り継ぐ 小石饅頭 会津で復活 店新築、決意新たに

開店に向けて仕込みに励む長岡さん

 浪江町の名物菓子「小石饅頭(こいしまんじゅう)」が会津で約3年10カ月ぶりに復活する。東京電力福島第一原発事故発生後、浪江町から会津坂下町に避難している菓子職人長岡光広さん(41)が古里で営んできた和菓子店「四季菓匠長岡家」を会津坂下町で28日に再開する。長岡さんは「祖父の代から続く長岡家をなくすわけにはいかない。会津で店の新たな歴史をつくる」と決意を新たにする。
 「ようやく再開にこぎ着けた」。新店舗での開業に向け、菓子の生地を作る手に自然と力が入る。師走の開店準備は慌ただしさに拍車を掛けるが、長岡さんの表情は晴れやかだ。
 長岡家は昭和3年の創業。小石饅頭は戦後の同30年代から店に並ぶ看板商品だ。白あんを茶色の皮で包み込み、蒸し上げて作る。口の中に入れると、みその風味とあっさりとした甘みが広がる。いくつ食べても飽きない味として浪江町民に愛されてきた。
   ◇    ◇
 長岡さんは双葉高を卒業後、東京都の製菓学校で和菓子を専門に学んだ。都内の和菓子店で10年ほど修業を重ね、平成15年に古里に戻った。店は軌道に乗り、南相馬市小高区と双葉町に支店を構える計画だった。
 しかし、原発事故が歯車を狂わせた。浪江町は避難区域に設定された。建て替えたばかりの店は東日本大震災の地震でも大きな被害はなかったが、休業を余儀なくされた。郡山市、横浜市と避難先を変え、23年5月から会津坂下町に妻と娘3人の5人で身を寄せた。避難先から一時帰宅するたびに胸が苦しくなった。「何で自分の家に入るのにビニール袋で足を覆わなければならないんだ」
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 会津坂下町では、町内の菓子製造販売会社に勤めながら、再開の準備を進めてきた。「いつか長岡家の看板を再び掲げる」。この思いだけが力の源だった。
 新築した店は、今月25日に引き渡しを済ませたばかり。店内の販売スペースや工場などは元の店の半分程度にとどまるが、長岡さんにとっては再出発の居城だ。放射性物質を懸念する客に配慮し、オーブンなどの器材は浪江から持ち出さず、全て新調した。
 店名にこそ出さなかったが、新店舗は「長岡家坂下店」との気持ちで、古里への思いは忘れない。「浪江町の店は、お客さんに育てられた。会津坂下町でも地域と共に成長したい」。新年の訪れよりも一足先に、新たな歩みを始める。

■1個90円
 看板商品の「小石饅頭」は1個90円(税込み)。季節の生菓子や焼き菓子なども販売する。営業時間は午前9時から午後6時30分まで。開店初日の28日のみ午前10時から。元日と1月7日は休むが、当面は無休で営業する。住所は会津坂下町字逆水23の2。電話番号は0242(93)5585。

長岡家を代表する和菓子「小石饅頭」

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