東日本大震災アーカイブ

環境省が帰還困難地域本格除染へ。富岡夜の森、桜まつりに間に合わせる方針

 環境省は今月中にも、東京電力福島第一原発事故で設定した帰還困難区域の本格除染に着手する。同区域を含む富岡町の「夜の森地区の桜並木」で始め、開花に間に合うよう平成26年度内に終える方針。桜並木は双葉郡住民のシンボルで、国は帰還に向けた弾みとしたい考え。春までの限られた期間でいかに空間放射線量を低減できるかが課題になる。
 望月義夫環境相が7日、県庁で内堀雅雄知事と会談後、報道陣に明らかにした。望月氏は桜並木について「(双葉郡の)シンボル的な存在なので一日も早く除染を進める。今春は大勢の人に桜を見てほしい」と述べた。
 除染は3月中に終える計画で、望月氏は東日本大震災と原発事故発生以降、中止が続いている桜並木の下で繰り広げられる町主催の祭り「夜の森桜まつり」の再開を将来的に目指す考えを示した。
 桜並木は全長2.3キロで約500本のソメイヨシノがある。このうち帰還困難区域の部分は1.7キロ、立ち入りの可能な居住制限区域は0.6キロに分かれる。居住制限区域の除染は平成25年3月に終えている。残りの帰還困難区域の部分はモデル除染事業として内閣府が23年11月に一部で除染した。
 また、望月氏は大熊町の帰還困難区域の除染に関し「政府と地元が検討して復興ビジョンを踏まえてしっかり進めていきたい」と語った。
 町の復興拠点に位置付けられている居住制限区域の大川原地区では除染が終わっており、同省は周辺の帰還困難区域の除染も始める方針。町が第二復興拠点とする帰還困難区域の下野上地区での除染を予定しているが、町との調整が遅れており開始時期は未定となっている。人口の約96%が帰還困難区域の双葉町では、復興計画を策定中で、完成し次第、同区域の除染について協議をする予定。他の自治体も復興計画に沿って検討する。
 帰還困難区域は原発事故に伴い、年間積算線量が50ミリシーベルトを超え、事故発生後5年間を経過しても20ミリシーベルトを下回らない恐れのある地域。南相馬、富岡、大熊、双葉、浪江、葛尾、飯舘の7市町村に設定されており、面積は約337平方キロメートル。事故前の人口は約2万5千人。人口、面積ともに避難区域全体の約3割に相当する。
 同区域は現在、除染手法の有効性を確認するモデル除染などが行われている。桜並木で実施する除染では、路面を少し削る切削機(ショットブラスト)を用いる。この手法で6号国道の放射線量を約3割低減した。
 同省によると、桜並木の空間放射線量は毎時3~4マイクロシーベルト。ショットブラストによる除染で可能な限り放射線量を低減させる見込み。一方で、同省の担当者は「どれだけ線量を低減できるかは分からない。事故前と同じ規模の祭りを開けるかは除染結果を踏まえ町が判断するようになる」としている。

カテゴリー:福島第一原発事故