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福島をつくる(15) 第1部 企業の覚悟 ワインデング福島(南相馬)

協力会社の倉庫を間借りし、高性能の大型モーターなどを組み立てる社員

<技術継承へ新採用>
 千葉県東金(とうがね)市の工業団地に社員はアパートから車や自転車で出勤する。東京電力福島第一原発事故で南相馬市小高区から移転した産業用モーター部品製造「ワインデング福島」の1日は静かに始まる。
 約4年前の移転で複数の取引先が離れた。発注を続けるメーカーは「ワインデングさんの手仕事は確実だ」と信頼を寄せる。社員は納期を遅らせないよう、間借りする倉庫で懸命に銅線を巻く。逆境は企業同士の絆を一層強くした。
 天皇、皇后両陛下が平成23年9月に作業を視察され、励ましを受ける。士気は高まった。月の生産台数を小型用が300台、中・大型用は100台と原発事故前の水準に戻した。

 「原町に新しい工場を建てようと思う」。工場長の清信(きよのぶ)正幸(43)が社員に切り出した。夏の暑さが厳しくなり始めた25年の7月半ばだった。
 清信は24年暮れから南相馬市や県庁、金融機関に足を運んだ。拠点を古里に戻すために活用できる補助金や融資の相談を重ねた。車で片道5時間かけ、東金市と本県を往復した。
 移転前の小高工場は現在、避難指示解除準備区域にある。「せっかく戻るなら、新しい挑戦をしたい」。同じ工場での再開ではなく、新しい製品づくりに対応できる広さの新工場建設を選んだ。分譲地のあった南相馬市原町区の市営工業団地に目星を付けた。
 被災企業が用地買収にも使える資金があるとの情報をつかむ。国の津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金だった。「うちは確かな技術がある。資金さえあればやっていける」。清信は、父であり社長の文昭(71)を説得した。

 補助金を受けるには、雇用確保のため正社員5人を新たに採用しなければならない。小規模企業にとって大きな決断だ。「5人も集まるのか」。不安を口にする社員に清信は頭を下げた。「今、人を増やし育てないと技術を伝える時間がなくなる。力を貸してほしい」
 村松清一(58)は賛成した。妻や子ども、孫と離れ、単身で東金市にいた。「古里で仕事ができる」。定年はそう遠くない。技を継ぐ人材も育てたかった。
 国の補助金指定に加え、あぶくま信用金庫(本部・南相馬市)と日本政策金融公庫いわき支店の協調融資第一号に決まった。県外から戻る企業への期待の表れだった。(文中敬称略)

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