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福島をつくる(16) 第1部 企業の覚悟 ワインデング福島(南相馬)

<古里で新たな挑戦>
 南相馬市原町区の6号国道に近い市営下太田工業団地に、白と茶色の真新しい建物が姿を現した。建設現場の掲示板に「ワインデング福島原町工場」の文字が浮かぶ。
 工場内には既に産業用モーター部品の製造に必要なクレーンなどの重機をそろえた。冬空に槌音(つちおと)が響く。桜の舞う季節には工場の稼働音へと変わる。「見るたびに気が引き締まる」。工場長の清信(きよのぶ)正幸(43)は進捗(しんちょく)を念入りに確かめる。
 新工場は2月中旬に完成する。敷地の面積は4000平方メートルと同市小高区にある小高工場に比べ約4倍に広がる。建床面積は2.5倍の1650平方メートルになる。屋根には売電用の太陽光パネルを備える。平屋だが、高さは約9メートルと小高工場より3メートル高くした。
 「同じ製品を作るだけでは新しい工場を造る意味がない」。清信と社長で父の文昭(71)は、今後5年間で売り上げの倍増を見据える。まずは最先端の板金・プラスチック加工機械、クレーンなどに使う高性能モーターの製造を増やす。製造ラインをゼロから設計し、部品の形状に合わせた分業ができるようにした。銅線を巻く機械も特注して効率性を高めた。
 夢は少量生産型の電気自動車モーターへの進出だ。モーターの心臓部の電工作業(銅線の巻線・組線)を手仕事で行い、メーカーの細かな要望に対応できる強みを生かす。一般の電気自動車のモーター生産は、大量生産をする大手メーカーにかなわない。メーカーが需要を見込めないとして設備投資をしない車は何か...。「スマートグリッド」(次世代送電網)を活用して街中を走る電気自動車などに活路を求める。清信は「街の道路や走る距離によってさまざまなタイプの車が必要になるはず。少量多品種のモーターこそ、生きる道」と目を輝かせる。
 原町工場は4月に稼働し、避難指示解除準備区域にある小高工場は避難指示が解除され次第、モーターの維持・補修に活用する。手作業の電工会社は県内でも数えるほどしかない。
 「技術はお金じゃ買えない。人への投資と確かな製品作りが会社を育て、信頼と雇用を生む」。清信の頭には、新たな分野に進む工程表ができている。古里の復興に併せ、限られた手で技をつなぎながら。(文中敬称略)

カテゴリー:福島をつくる-未来への挑戦

建設中の新工場の前で、打ち合わせをする工場長の清信(左)

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