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福島をつくる(19) 第1部 企業の覚悟 向山製作所(大玉)

パリで開かれた「サロン・デュ・ショコラ パリ」の会場で人気を集める向山製作所の販売ブース=平成26年11月

<海外の評価 励みに>
 フランスのパリで平成26年秋、5日間にわたって開かれた世界最大規模の菓子販売イベント「サロン・デュ・ショコラ パリ」。ひときわ人だかりができたブースがあった。出店3年目を迎えた大玉村の向山製作所が生キャラメルを販売していた。
 販売担当の武藤奈緒美(25)が「日本のキャラメルです」と試食を勧める。客が口にすると、驚きの表情を見せた。「セボン(おいしい)!」
 生キャラメルは賞味期限が短い。現地で材料を調達し商品を作る必要がある。調理場を借りて毎日作っては売り場に並べた。観光を楽しむ時間はなかったが、武藤は充実感でいっぱいだった。

 福島でたどり着いた味は本物か―。社長の織田金也(50)は東京電力福島第一原発事故の起きた23年の夏ごろから海外での販売を考え始めた。風評で自信が揺らいだ菓子の価値や技術力を確かめたかった。
 菓子の本場・パリで毎秋開く「サロン・デュ・ショコラ パリ」に狙いを定める。東京都内に著名なフランス人パティシエを訪ねた。東日本大震災の被災地支援活動で郡山市を訪問していた。
 持参した生キャラメルを差し出す。パティシエの表情が変わった。「魔法のようだ。こんなに口溶けがいいキャラメルはフランスにない」。間もなく、パティシエの推薦を受けた主催者から出店を認める電話が会社に入った。
 24年秋に初めて参加した。当初、現地で調達した原料で福島の味をなかなか再現できなかった。生クリームなどの原料がうまく固まらず、形にもならない。配合割合を変え、夜遅くまで何度も作り直した。
 イベントが始まると、生キャラメルは熱狂的に迎えられた。商品は連日、売り切れた。世界中から集まった菓子好きは風評に惑わされず、福島で完成した味を受け入れた。織田は涙が止まらなかった。以来、3年連続で店を出した。

 織田は菓子作りへの自信を取り戻す。全国の百貨店などを精力的に回り販売を続けた。口コミで評判が広がる。風評より、味を評価する声が強くなった。
 東京のJR東京駅丸ノ内南口のすぐ前に立つJPタワー内の商業施設「KITTE GRANCHE(キッテ グランシェ)」。出店者に選ばれ、25年3月、常設店を構えた。
 「夢の扉」は再び開こうとしていた。(文中敬称略)

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