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福島をつくる(20) 第1部 企業の覚悟 向山製作所(大玉)

鮫川村の畑でトウモロコシの収穫作業に立ち会う織田(写真上、左から3人目)。県産原料によるキャラメルポップコーンの商品化を目指す。

<県産発信 次の一手>
 大玉村の向山製作所は電子部品製造が売り上げの7割を占める。微細なハンダ付けは国内屈指の技術力を誇る。電子基板に加え、有機エレクトロルミネッセンス(EL)の車載用ディスプレーを扱う。有機ELは材料そのものが発光する。液晶のように光源となるバックライトがいらない。次世代の高画質テレビの画面や照明用として市場の拡大が期待されている。
 社長の織田金也(50)は「ものづくりは電子部品も菓子も同じ」と考える。材料を加工し、製品を検査する。検証結果を基に手法を改め、技術を向上させる。製造過程は重なる。
 ただ、電子部品製造は大手企業の委託業務で、受注量が景気に左右される。平成21年のリーマン・ショック直後は仕事の8割を失った。「自社商品を持つ」。県産素材を生かす菓子作りに生き残りを懸ける。

 織田は次の一手を打つ。生キャラメルは冷蔵が必要で、遠方へのお土産には向かない。常温で保管できるキャラメル味のポップコーンを昨年5月に発売した。「爆裂種」という特別な品種のトウモロコシを原料にする。国内の栽培は少なく、同社を含め国内のポップコーンの原料は米国産が多い。
 「原料を県内で作れないか」。織田は昨春、鮫川村商工会に相談に出向く。村特産のエゴマを使った自社の生キャラメル商品が人気を集めていた。村との絆を大切にしたかった。
 村商工会の仲介で村内の社会福祉法人に爆裂種の栽培を頼んだ。村内の遊休農地約10アールで試験的に育て、収穫した。ポップコーンにしたところ、米国産より甘みがあった。商品化に向け、今年は作付面積の拡大を計画する。織田は村に新たな特産物をつくり、地域おこしにつなげる夢を描く。

 向山製作所は3月、郡山市のJR郡山駅構内にある「郡山おみやげ館」にカフェ兼物販店を開く。郡山は県内の交通網が交わる要衝で、駅は県外から訪れた観光客にとって本県の「顔」になる。従業員には「夢の扉」を開く鍵に映る。
 地域の良さを理解し、仕事に生かす―。織田は地方に軸足を置く企業の一番の強みに挙げる。「地元の食材の魅力を生かし、質の良い商品の提供を続ける。きっと世界に、未来に通じる」。多くの試練を乗り越えてきた今、織田は確信している。(文中敬称略)

=第1部「企業の覚悟」は終わります=

カテゴリー:福島をつくる-未来への挑戦

村で収穫した爆裂種のトウモロコシ

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