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第2部 営業損害(14) 東電原発被害損害賠償弁護団副事務局長 紺野明弘弁護士に聞く 被害ある限り償いを

国と東電が示した営業損害の賠償の素案の問題点を指摘する紺野弁護士

 東京電力福島第一原発事故に伴い避難区域内に構えた、かつての事業所での再起を期す経営者は多い。避難区域外での移転再開には県などの補助金が用意されているが、経営者には費用負担が重くのしかかるケースもある。移転再開を諦め、避難指示の解除を待つ事業者の生活を支えているのは、営業損害に対し東電が支払っている賠償金だ。しかし、経済産業省資源エネルギー庁と東電は平成28年2月分で終了する素案を打ち出した。東電原発被害損害賠償弁護団副事務局長で損害賠償に精通している紺野明弘弁護士(39)=福島市=は取材に応じ、「避難指示が解除され、人口など地域が原発事故前の姿を取り戻すまで、東電は営業損害の賠償を続けなければならない」と強調した。

 ―移転再開を支援する補助金も多数用意されているが、かつての事業所での再開を目指す経営者がいる。その生活を支えているのは東電からの営業損害の賠償金だ。

 「行政は避難住民の生活再建を支えるため、各種補助金を設けている。ただ、財源には限りがある。多額の自己負担が困難で、費用面から移転再開を断念する事業者は多いと聞く。そうなった以上、避難区域内の事業所で営業を再開し、原発事故前の規模に収入が戻るまで、東電には賠償支払いの義務がある。避難指示が解除されたからといって社会基盤や生活環境が整っているとは限らない。個別の事情を考慮せず、先に営業損害の終期を明示するのは問題がある。被害がある限り償わなければならない」

 ―原発事故により地域社会が崩壊して商圏が失われた事業所などが移転再開を目指す場合、移転先で原発事故前と同等の規模で商いができるだけの賠償が必要ではないか。

 「移転費用を損害として求められるのかという問題がある。ただ、原発事故の損害賠償では損害の中に含めるのが難しいものが認められている。例えば、『住居確保損害』が挙げられる。持ち家などの財物賠償に一定額を上乗せする考え方だ。これは原発事故の特殊性が認められている。営業損害であっても、移転・建設に掛かる費用に満たない場合、上乗せを考えるべきだ」

 ―営業損害の賠償金は課税対象となる。原発事故では国税申告・納付の期間が延長されたが、猶予期間は3月末で終わる。現状の納税制度は妥当なのか。

 「日弁連では25年7月に原発事故の賠償金を非課税とする立法を求める提言を発表した。避難指示が解除されていない中、各種書類をそろえなければならない国税申告・納付を求めるのは被災者に厳しいと思う。避難区域については課税を免除するべきだ」

 ―営業損害の賠償については今後、どのような課題が出てくると想定されるか。

 「東電側で支払いを拒絶するケースが増えてくるだろう。裁判外紛争解決手続き(ADR)や訴訟が増加する。最近は東電が細かい資料を求めてくるケースが多く、円滑に紛争を解決するというADRの趣旨から遠のいていると感じる」

 ―就労不能損害の賠償は今月末で打ち切られる。現時点での終了は妥当か。

 「一律の打ち切りは不当。被災者の個別の事情に応じて柔軟に対応するべきだ。事業者が再開する際、労働者の確保に大きな影響がでるだろう」

カテゴリー:賠償の底流-東京電力福島第一原発事故

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