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福島をつくる(21) 第2部 スポーツの力 福島ホープス(野球)

講演会場でRC関係者と福島ホープスについて語る扇谷(左)。県民球団として県民の理解が不可欠だと考えている

<県民が「オーナー」 地域活性担う覚悟>
 「地域と、地域の子どものために野球をする。福島を創生したい」。扇谷富幸(35)は郡山市のホテルでロータリークラブ(RC)の例会で講演し、事業所の代表らに熱っぽく語った。プロ野球の独立リーグ・BCリーグに今春参戦する県内初のプロ野球球団「福島ホープス」の社長として球団に懸ける思いを訴えた。
 扇谷は講演活動に力を入れている。できる限り多くの人と会い、ホープスの地域密着の理念を伝える。県内全域を本拠地とする「県民球団」の出発に欠かせないと考えている。
 県内の企業回りも続ける。1日に3~4カ所は訪れ、出資者や広告スポンサーを募る。運営会社の株主となる出資者集めに当たってはこだわりがあった。「突出した株主はつくらず、できるだけ幅広く集める」。出資額の上限を設けた。特定のオーナーが存在しない、県民ぐるみで支えてもらう球団を目指す。

 扇谷は東日本大震災と東京電力福島第一原発事故発生以降、県内の若い世代が県外に流出する現状を見てきた。悔しさが募った。「民間の力で県内を明るくし、人口減少に歯止めをかけなければ」。切迫感に突き動かされ、球団創設という大事業に乗り出した。野球は幅広い年齢層に親しまれ、最も効果的と考えた。
 掲げるのは「ボールパーク化構想」。試合と同時に、球場で多彩な企画を催す。ご当地グルメの出店やコンサート、子ども向け遊具の開放...。球場へ気軽に遊びに来てもらう。地場産品や地域の祭りなどを取り込み、企業や団体に参加を呼び掛ける。経済効果や交流人口の拡大で県内を活性化させる夢がある。

 昨年6月にリーグの本加盟が承認されたが、当時、周囲の反応は鈍かった。日本野球機構に所属していた岩村明憲(36)の獲得が転機になる。
 GMの小野剛(36)が11月初めに最初に接触した。選手を兼ねた監督を頼む。ヤクルトに籍を置いていた岩村はメジャーリーグ復帰が念頭にあった。返事はすぐにもらえない。監督の出席が必要なリーグのドラフト会議は11月28日に迫っていた。扇谷は長文のメールを送る。「福島を全国に発信するため力を貸してほしい」。高い知名度、日米での豊富な試合経験、若さ。どれも欲しかった。思いが通じたのは会議の数日前だった。
 「岩村監督の球団だね」。説明に出向いた企業の反応が変わった。球団の注目度は一気に高まった。「ホープスの顔ができた」。選手にとっては岩村が最大の目標になる。扇谷はチームづくりへの手応えも感じた。
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 県内のプロ・企業スポーツの活躍は震災、原発事故からの復興を目指す県民の大きな励みになる。選手や指導者、経営陣は何に挑み、何をつくり出すのか。県民と向き合う姿を追う。(文中敬称略)

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