田村市の飲食店主と農家が、東京電力福島第一原発事故からの復興と風評払拭(ふっしょく)につなげようと、地元の食材による「ご当地グルメ」作りを進めている。4月からの「ふくしまデスティネーションキャンペーン(DC)」を前に、市内産野菜をふんだんに使った「たむら八彩(やさい)カレー(仮称)」を3月中に発表する。スイーツの商品化も検討しており、関係者は「田村の食の魅力を全国に発信する」と張り切っている。
飲食店主、農業者ら約20人でつくる「田村市ご当地グルメプロジェクト」がカレーの開発を進め、最終段階に入った。3月1日に開かれる市の合併10周年記念式典で、たむら八彩カレーの誕生を発表する予定だ。4月1日のふくしまDC開幕までに、市内の飲食店4、5軒がメニューに加える。
たむら八彩カレーは市内産野菜を豊富に使い、調理方法や味付けは参加する各飲食店に任せる。食材は各店が地元の直売所などから仕入れる。市内都路町中心部で家庭料理の店「よりあい処華(はな)」を営む今泉富代(ひさよ)さん(67)は、看板料理のけんちん汁にカレールーを加えた。具材にニンジンやゴボウ、白菜、卵など都路産の食材を使い彩り良く仕上げた。1月から試作品として常連客に提供しているが、「具だくさんで、味がまろやか」と好評だという。
今泉さんは避難先から戻った住民の憩いの場をつくろうと、昨年6月に店を構えた。都路町では、全域が居住可能となった昨年4月以降も住民帰還の動きは鈍い。「カレーが都路に足を運ぶきっかけになってほしい」と期待する。
プロジェクト代表を務め、市内船引町でレストラン「ドルフィン」を営む箱崎哲司さん(61)は根菜類などを使ったカレーうどんを研究している。「各店が違う味に仕上げ、お客さんに食べ歩きを楽しんでもらえるようにしたい」と話す。今後も参加店の募集を継続する。
箱崎さんらは昨年11月、「食」の力によって原発事故の影響が残る古里を盛り上げようと、プロジェクトの準備会を設立した。田村市は年間を通じて農産物の出荷が盛んだ。こうした土地柄をPRするには、野菜を具材にするカレーが最適と考え、ご当地グルメの第一弾に選んだ。
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