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「賠償の底流-東京電力福島第一原発事故」アーカイブ

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第2部 営業損害(16) 支払額の合意至らず 減収分、補助金が頼り

賠償関係の書類に目を通す安川さん。営業損害賠償の打ち切りの時期が素案に示され不満が募る

 東京電力福島第一原発から30キロ圏内にある南相馬市原町区の青葉幼稚園では、今年春に入園する子どもたちを迎え入れる準備が進む。名簿の確認、保護者への説明資料...。幼稚園を運営する学校法人青葉の理事長・安川正さん(67)は、作業が一段落するたびに不安があふれ出す。園児数が原発事故前に戻る日は来るんだろうか-。


 青葉幼稚園は原発事故により園児数が激減した。県内の私立幼稚園で構成する私立幼稚園関係原子力損害対策協議会を通じ、東電に営業損害賠償を請求している。ただ、現在までに支払われたのは、平成23年12月分までの仮払金にとどまっている。賠償内容について協議会と東電が合意に至っていないためだ。

 県の被災私立学校復興支援事業の補助金を受け、運営費に充てている。原発事故による減収分の最大で8割程度を補える補助金で、東電から賠償金が支払われた段階で、賠償金と補助金で減収分を超えた額は県に返還する方針だ。原発事故発生後の23年度は約3000万円を受けた。今年度も約1350万円に上っている。

 補助金は県が文部科学省からの交付金を活用しており、実施期間は今年度まで。県は文科省に継続を要望しているが、現時点で明確な回答は得られていない。「国と東電が進めてきた原発が起こした事故で被害を受けているのに、県の事業に助けてもらっていることに違和感がある」

 東電による損害賠償が支払われるまで、幼稚園の運営は補助金に頼らざるを得ない。仮に事業が数年、延長されても幼稚園を取り巻く環境が短期間で元に戻るわけではないとも思う。「補助金の先行きが見通せない中、賠償がなかなか決着しないのはもどかしい」


 経済産業省資源エネルギー庁と東電は昨年12月、営業損害の賠償支払いを28年2月分で終了するとした素案を示した。

 正式な賠償も得られていないのに、一方的に打ち切り時期が示されたと受け止めている。不満が募る。原発事故の影響は今も色濃く残り、園児数の回復は困難な状況が続いている。「60年以上にわたって地域に根付いてきた幼稚園だ。簡単に移転して営業できる業態ではない」

 賠償金が支払われなければ、園舎の改築や備品購入などに備え、こつこつと蓄えてきた資金を使うしかない。それを使い果たしたら...。閉園の二文字が脳裏をかすめる。

カテゴリー:賠償の底流-東京電力福島第一原発事故

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