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第2部 営業損害(17) 「自立したくても...」 保護者の不安拭えず

使われていない保育室。原発事故で園児数は激減し、回復の見通しは立たない

 東京電力福島第一原発事故に伴う避難などで園児数が減り、南相馬市原町区の青葉幼稚園は東電から平成23年12月分までの営業損害賠償の仮払いを受けた。
 「保護者の思いは人それぞれだから...」。同年10月の再開以降、幼稚園の掲示板に、園舎内の環境放射線量を示している。幼稚園を運営する学校法人青葉の理事長・安川正さん(67)は寂しそうな表情を浮かべた。放射線への不安が依然として拭えていないと感じている。

 幼稚園は原発事故に伴う緊急時避難準備区域の解除に合わせ、再開した。民間業者に施設の除染を委託した。園舎内の測定値は毎時0.1マイクロシーベルト程度で推移している。安川さんは「心配せずに子どもたちを通わせてほしい」との思いを抱く。
 国は放射線量に応じて避難区域を線引きしている。しかし、区域外の放射線量について明確に「人体に全く影響がない」とは発信していない。
 掲示板に「安全」とは書き込めないと思っている。測定値を書き入れ、保護者に判断してもらうしかできない現状が悩ましい。
 「どの数値以下なら絶対に安全なのか、国は責任を持って示すべき。そうでなければ、保護者の不安を完全に拭い去ることはできない」。園児数が半減した園内に目を向けた。

 幼稚園は、避難していた親子が帰還した際、子どもの入園にすぐ対応できるよう教職員を多めに雇用している。
 原発事故前は二百数十人の園児に対し、教職員は18人だった。現在の園児は120人ほどだが、15人が在職している。子どもたちの園舎生活をきめ細かく支えられるメリットもあり、保護者から評判が良い。
 園児数は運営を再開してから少しずつ増えている。とはいえ、教職員の人件費が経営を圧迫する。光熱費をはじめとした園舎の維持管理費も大きく削るのは難しい。
 東電からは23年12月分までの営業損害賠償の仮払いがあった。しかし、それ以降の支払いはない。県から被災私立学校復興支援事業の補助金を受け、何とか経営をやりくりしているのが実情だ。
 営業損害の賠償は28年2月分で打ち切られる素案が示され、補助金は今年度で終了となる懸念もある。「賠償も、補助金もなくなったら経営どころではない。自立したくてもできない悔しさを知ってほしい」


カテゴリー:賠償の底流-東京電力福島第一原発事故

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