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「賠償の底流-東京電力福島第一原発事故」アーカイブ

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第2部 営業損害(18) 園児数減 避難で加速 幼児教育 存続の危機

園長室から園児の姿を見守る関さん。原発事故によって減った県内の子どもたちが戻ってくるのを願う

 2万4873人-。平成26年10月現在の本県の子ども(18歳未満)の避難者数だ。東京電力福島第一原発事故で放射性物質が拡散した。依然として、子どもに与える影響を心配する父母は多い。

 避難区域内外を問わず私立幼稚園の経営は窮地に立たされている。原発事故前から少子化に伴う園児減少が続いていた。「ただでさえ先細り傾向だった。原発事故で一気に10年ぐらい時間が進んだようだ」。県私立幼稚園連合会理事長を務める関章信さん(67)は幼児教育の先行きを心配する。

 経済産業省資源エネルギー庁と東電は営業損害の賠償を28年2月分で打ち切る素案を示した。「あと1年で子どもは帰ってくるのだろうか」。危機感と焦りは増すばかりだ。


 昨年12月、福島市内で国と東電から損害賠償に関する説明を聞いた連合会幹部が内容を伝えてきた。資料「今後の福島県内の商工業者等に係る損害賠償等について(案)」が配布されたという。28年2月分で営業損害の賠償を終了とする内容に目を疑った。

 「たくさんの子どもが避難している状況を知っているのか」。多くの私立幼稚園が原発事故に伴う減収分の最大8割を補える県の被災私立学校復興支援事業の補助金で、しのいでいる。補助金は今年度までとされている。その先は東電からの営業損害賠償がなければ、減収分を埋められない。

 県私学・法人課によると、県内の私立幼稚園の園児数は平成9年度が2万4573人。少子化の影響などで原発事故前の22年度には1万9193人に落ち込んだ。一年当たりの減少率は1~2%程度で推移していた。原発事故直後の23年度は1万7629人に減り、減少率は8%に上った。「一気に進んだ時計の針はなかなか戻らない」

 素案は、避難区域内の事業者に避難指示解除後の再開か移転再開、廃業の判断を促す内容も記されていた。福島第一原発周辺は今も避難区域があり、住民が古里に帰還できる見通しは立たない。

 仮に再開を選択しても、避難指示の解除前に賠償が打ち切られる事業者が出る懸念がある。移転再開はもっと厳しい。「私立幼稚園は親子代々で経営しているところが多い。地域の信頼があってこそ」。避難区域内の幼稚園経営者の仲間たちを思うと胸が締め付けられた。「素案は廃業しろと言っているのと同じ」


 国と東電が素案を示したのを受けて、県私立幼稚園連合会は要望書を県に提出した。避難区域内の幼稚園や病院などは地域の基盤であり、他の地域に移ってしまえば住民の帰還がさらに困難になる点などを明記して素案の撤回を求めている。

 関さんは、園児が元気に遊び回る、かつての幼児教育の現場に思いをはせた。「素案は受け入れがたい内容だ。これが通れば、県内の多くの私立幼稚園が閉園に追い込まれる」

=第2部「営業損害」は終わります。

カテゴリー:賠償の底流-東京電力福島第一原発事故

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