東日本大震災

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中間貯蔵予定地の大熊、双葉 営農再開に法の壁

 東京電力福島第一原発事故に伴う除染廃棄物などを保管する中間貯蔵施設建設予定地の大熊、双葉両町で、農地を手放さざるを得ない農家の営農再開に農地法が障壁となっている。避難先で円滑に農地を取得するためには、農業委が発行する「耕作証明書」が必要だが、国に売買・貸借してしまうと、証明書が発行されなくなるためだ。これまで免除されていた農地の贈与税の納税義務も生じる。農家からは国や県に農地法の要件緩和や納税免除などを求める声が上がっている。
 農地法では、効率的な営農のため、新規就農する場合に必要な農地の下限面積を設定している。市町村の農業委が独自に判断できる例外もあるが、原則として50アール(北海道は2ヘクタール)以上となっている。
 ただ、既に農業に従事している農家であれば、居住地の市町村の農業委に「耕作証明書」を発行してもらえる。その上で、他の市町村の農業委が定める下限面積を満たせば、他の市町村でも数アール程度の小規模な農地から取得できる。
 しかし、大熊、双葉両町で耕作していた農家が国に農地を全て売却・貸借すれば農業者とみなされず、耕作証明書は発行されない。新規就農者と同様にゼロからの再出発となる。
 大熊町農業委の根本友子会長は「先祖が苦労して広げた土地をやむなく手放す。耕作証明書のように農業者としての実績を証明する特例措置がなければ営農意欲もなくなる」と訴える。
 農地取得に関する認可の権限は各農業委にある。県農業担い手課の担当者は「農地取得の要件を緩和すれば、避難先の農家に不公平感が生まれかねない」と懸念を示し、「大熊、双葉両町の農業委が避難先の農業委と調整が必要になる」と話す。農水省農地政策課は「農業委の柔軟な対応で解決できないか検討している」としている。
 中間貯蔵施設を主管する環境省の担当者は「新たな農地取得が困難なことは認識している。代替農地を求める農家がどれくらいいるかなど現状を把握して対応したい」としている。
 親などから農地の生前一括贈与を受けた場合、贈与税の納税が猶予されている。中間貯蔵施設建設予定地の大熊、双葉両町の農家が農地を国に売却するか、地上権を設定すれば、贈与を受けた時点にさかのぼって納税義務も生じる。
 環境省によると、汚染土壌や廃棄物を最長30年間保管する中間貯蔵施設の面積は約16平方キロメートル(1600ヘクタール)で、このうち農地は約三割に上る。
 大熊、双葉両町によると、農地全てが建設予定地にかかる農家は大熊町で少なくとも百数十人、双葉町は百人前後だという。
 大熊町農業委の根本会長は20日、農地法の要件緩和や納税免除などを国や県に働き掛けるよう渡辺利綱町長に要望書を提出した。


※耕作証明書
 市町村の農業委員会が、農業者を証明する農地基本台帳などに基づき、耕作している農地面積や年間従事日数、世帯員の農業従事状況、農機具の保有状況などについて証明書を発行している。他市町村の農地を新たに取得する場合をはじめ、住宅や農業用倉庫の建築、軽油引取税の免税申請などに使用する。東京電力福島第一原発事故に伴う個別の損害賠償請求で必要になる場合もある。

※贈与税納税猶予制度
 農地を生前一括贈与した場合の課税の特例。農業者が農地の全部を農業後継者に一括して贈与した場合、後継者に課税される贈与税の納税が猶予される。農地の細分化防止と後継者育成を税制面から支援するため昭和39年度に創設された。農地の20%以上を譲渡、貸し付け、転用、耕作放棄した場合や農業経営をやめた場合などには、受贈時点にさかのぼって納税義務が発生する。

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