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【高濃度汚染水】全量処理 来年5月完了見通し 浄化水処分に高い壁

 経済産業省は5日、東京電力福島第一原発の地上タンクに保管している高濃度汚染水について、多核種除去設備(ALPS)による全量浄化が平成28年5月に完了する見通しを示した。汚染水漏えいによる土壌汚染などの懸念が解消されるが、浄化水はトリチウムを含んでおり処分法は宙に浮いたままだ。ALPSの使用済み機材は放射性廃棄物となり、最終的な保管先確保が課題となる。

■廃炉加速に期待
 経産省は5日に開かれた自民党東日本大震災復興加速化本部の廃炉・汚染水対策会議で、全量浄化の完了時期を明らかにした。1日に2千トン処理できるALPSをフル稼働し、新たに発生する汚染水と、地上タンクに保管されている汚染水を並行して浄化した場合を想定。汚染水の発生量を減らす凍土遮水壁などの効果も踏まえて試算した結果、来年5月には全量浄化を終えることができると見通した。
 東電は当初、今月中の浄化完了を目指していたが、ALPSの稼働率が思うように上がらず断念した。昨年12月からは強い放射線を放つストロンチウムの除去装置を追加配備し、浄化作業を加速。暫定的な対応として今年5月までに、ストロンチウムのみの除去を急ぎ、その後、ALPSで浄化する。最終的に汚染水からトリチウムを除く62核種の放射性物質を取り除くことができる。
 処理が進めば、タンクから汚染水が漏えいするリスクが減る。さらに、東電は福島第一原発構内の放射線量が低減し、労働環境が改善されるため廃炉作業が加速すると期待している。

■トリチウム消えず
 現在、構内の地上タンクにはALPSで浄化された水が約32万2千トン(2月26日現在)保管されている。ただ、浄化水に含まれるトリチウムの処理方法が見つからず、処分できない状況が続いている。
 原子力規制委員会の田中俊一委員長(福島市出身)は「ALPS処理後の水は希釈して海に流すべき」との主張を繰り返している。国が定めたトリチウムの海洋放出基準の1リットル当たり6万ベクレル未満であれば、問題はないという立場だ。一方、東電は、風評被害を懸念する漁業者らに配慮し海洋放出を見送っている。
 経産省は有識者による作業部会でトリチウムの地層注入など複数の処理方法を検討しているが、技術的に難しいという。

■廃棄物処分先未定
 ALPSで取り除いた放射性物質は設備内のフィルター状の吸着材に納まる。使用後は高濃度の放射性廃棄物として保管容器に入れ、敷地内の施設で一時貯蔵されているが、最終的な処分先は未定のままだ。
 使用済み吸着材の放つ放射線量は、厚さ約11センチの鉄の容器に入れ、1メートル離れた場所でも毎時0.45ミリシーベルトと高い。国が除染の長期目標とする年間被ばく線量の1ミリシーベルトのほぼ半分に当たる数値だ。
 一方、汚染水を保管したタンクは使用後に解体され、廃棄物として構内に保管している。今後も増え続ける廃材の保管場所の確保が課題となる。原子力の専門家は「(第一原発の)廃棄物の量は多く、問題をしっかり整理しなければならない」と指摘している。

【背景】
 東京電力福島第一原発の地上タンクに保管されている汚染水は2月26日現在、約20万2千トン。さらに、強い放射線を出すストロンチウムのみを取り除いた処理水が5万6千トン貯蔵されている。東電は、トリチウム以外の62種類の放射性物質を除去するALPSの既設三系統と増設三系統、高性能一系統の試運転を続けており、フル稼働すれば1日最大約2千トンの汚染水を処理できるとしている。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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