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国の監督に甘さ 第一原発汚染雨水流出 規制委と県対応後手に

 東京電力福島第一原発で汚染された雨水が港湾外の海に流れ出ていた問題で、東電に情報開示を求めず、対策を先送りしてきた監督官庁の経済産業省の姿勢が問われている。さらに、監視すべき立場の原子力規制委員会と県は流出を把握しながら見過ごしてきた。監視・規制する側の対応のまずさも浮き彫りとなっている。

■規制の対象外
 規制委の田中俊一委員長(福島市出身)は4日の記者会見で、汚染雨水対策への関与が不十分ではないかとの指摘に「責任は東電にある。箸の上げ下ろしまでわれわれが技術指導する立場ではない」と反論した。
 東電からの規制委への報告は平成25年11月にさかのぼる。1~4号機の原子炉建屋の山側(西側)を通る排水路の雨水から高い値の放射性物質が検出された直後だった。県担当者も出席した26年1月の規制委の作業部会をはじめ、対策を計6回議論した。
 海洋汚染の対策が取られている港湾内に排出先の変更を求める意見もあったが、東電は明確な回答を保留。規制委は同2月、東電に27年3月まで1年間の猶予期間を与え、濃度の低減や管理計画の策定などを求めるにとどめた。
 規制委が厳しく対処しなかったのは、汚染雨水が法的な規制の対象外と判断したためだ。排水路の雨水は海への放出が許容される放射性物質濃度の上限値「告示濃度限度」を大幅に超えていた。しかし、雨水は原子炉等規制法に基づく液体放射性廃棄物の対象に含まれていない。規制委は法を根拠に汚染雨水の流出を事実上黙認していた。
 規制委の金城慎司東京電力福島第一原発事故対策室長は「排水路は地下にあり、東電の対応は難航していたと認識している。地元の人々に不安を抱かせたことは申し訳なく思う」と謝罪した。
 県は第一原発周辺の13市町村などとともに県廃炉安全監視協議会を構成し、専門家の指導・助言を受けながら廃炉作業を注視している。しかし、汚染雨水の放射性物質濃度が高いことへの問題意識が薄く、具体的な手を打たずにきた。県原子力安全対策課は「情報を適時把握できるよう努めてきたが、結果として対応が後手に回った」としている。

■「思い至らず」
 経済産業省は第一原発事故の対応拠点として、Jヴィレッジ(楢葉・広野町)に廃炉・汚染水対策現地事務所を置く。約20人が常駐し、廃炉・汚染水対策に向けた企画・立案や工程管理、トラブルへの対応に当たっている。同所には規制委の福島第一原子力規制事務所もあり、保安検査官ら約10人が第一原発を監視する。
 国は事故収束に向けて「前面に出る」と繰り返し主張しているが、同省は今回の問題で、東電に排水路の清掃や汚染源の特定などを指示しただけだ。
 昨年4月以降は情報の開示を積極的に求めていない。廃炉作業の管理監督への認識の甘さを露呈した。木野正登現地事務所参事官は「問題への対応は指示した。ただ、漁業者らに汚染雨水の流出を説明すべきで、思いが至らない部分があった」とした。

■東電任せ
 県防災会議原子力防災部会委員を務め、社会情報学が専門の佐々木康文福島大准教授(44)は「原発事故発生後、県民は国や県の情報公開の在り方に疑念を抱いている。(行政側は)東電任せの対応に終始せず、自らが責任を持って廃炉作業の現場に携わらなければならない」と監視、監督の厳格化の必要性を指摘する。
 その上で「国や県は東電からの情報提供を待つだけでなく、情報を取りに行く姿勢が必要になる」とし、国や県の責任ある対応を求めている。

【背景】
 東京電力は2月24日、福島第一原発2号機建屋大物搬入口屋上の汚染雨水が排水路を通じ、港湾外の海に流れ出ていたと明らかにした。昨年4月以降、10カ月間にわたり排水路を流れる雨水の放射性物質濃度を観測していたが、公表していなかった。国が定めた原発から放出される水の放射性物質濃度の上限である「告示濃度限度」はセシウム134が1リットル当たり60ベクレル、137が90ベクレル、ストロンチウム90は30ベクレル。問題の排水路からは昨年4月以降、最大でセシウム134が1リットル当たり280ベクレル、137が770ベクレル、ストロンチウム90などベータ線を出す放射性物質が1500ベクレルと、告示濃度限度を大幅に上回る値が出ていた。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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