東日本大震災アーカイブ

【連載・動きだした中間貯蔵施設】(下)「30年以内」守れるのか 

30年以内の県外最終処分が明記された改正法。県民は進捗(しんちょく)を継続的に注視する必要がある

 「仮置き場から中間貯蔵施設への除染廃棄物の搬出時期を早期に示してほしい」。川俣町の古川道郎町長は環境省に求め続けている。

 同省は当初、「仮置き場に廃棄物を置くのは3年間程度」と町に説明していた。これを受け、町は町民から3年間を目安に仮置き場の用地を借りた。しかし、中間貯蔵施設への搬出が始まらないまま、一部の仮置き場で3年が経過しようとしている。

 「契約期間をいつまで延長すればいいのか」。古川町長は、時期があいまいでは説明がつかず、地権者や周辺住民からの理解が得にくいとみる。

 同省の担当者は搬出見通しについて、「まずは先行する双葉郡と田村市の計九市町村で調整できた所から始める。残る市町村も順次搬出したい」とパイロット(試験)輸送について説明するにとどまり、本格輸送の具体的な工程は示せていない。

 大熊、双葉両町に建設される中間貯蔵施設の地権者は2300人以上に上るが、用地交渉が難航し、施設完成のめどが立たない。廃棄物の受け皿が不足すれば、仮置き場からの搬出が停滞する可能性もあり、同省関係者には焦燥感が漂う。
 
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 中間貯蔵施設の工程をめぐっては、30年先の県外最終処分の具体化も大きな焦点となっている。

 日本環境安全株式会社(JESCO)法が改正され、「中間貯蔵施設への搬入開始から30年以内の県外最終処分の完了」が法制化された。13日に最初の廃棄物が持ち込まれ、30年の時計の針が動きだした。

 同省と県、大熊、双葉両町が結んだ安全確保協定は、同省による最終処分までの工程表作成を義務付けた。同省は「少なくとも数カ月かかるが、早急に提示したい」と作業を進める。

 しかし、最終処分場の確保など課題は尽きない。県幹部は「搬入開始から20年後には最終処分場の候補地が決まってなくては、30年先の県外最終処分は実現しないのではないか」と懸念を示す。中間貯蔵施設では県が適用除外した環境影響評価の手続きをはじめ、最終処分場には地元理解の醸成、施設整備などに10年は必要となる可能性を指摘する。
 
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 同省は、中間貯蔵施設への廃棄物搬入の開始目標を結果的に二回も先送りするなど、見通しの甘さを露呈した。県民からは「30年以内の県外最終処分の約束を守れるのか」との声も聞かれる。

 原発事故の被災者支援に当たる紺野明弘弁護士(福島市)は「法制化によって国には県外最終処分の義務は生じたものの、達成できなかった場合に誰がどうやって責任を取るかは法的に定かでない」と述べ、最終処分の責任所在が不明確な点を問題視する。

 その上で、「国に必ず実行させるためには、県民が継続的に工程の進み具合を注視していく必要がある」と県民の役割の大きさを強調する。

カテゴリー:福島第一原発事故