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郡山の陶芸に新風 避難乗り越え再起 商都の活気華やかに表現

新たな陶芸品の成形作業に励む志賀さん

 新天地に新しい陶芸文化を-。浪江町の大堀相馬焼「岳堂窯」の窯元だった志賀喜宏さん(54)は、東京電力福島第一原発事故に伴い避難している郡山市に新しい窯を構え、オリジナル陶器「あさか野焼」の制作を始めた。市内の土を使い、商都・郡山の活気をイメージした華やかな作品に仕上げる。近く商標登録取得の手続きに入る。「新たな古里の住民に愛される焼き物を作る」と前を向く。

 真新しい工房に、ろくろを回す音が響く。志賀さんは4日、郡山市中野に構えた「あさか野窯」で陶器を焼き上げる前の成形作業に励んでいた。「思い描く形に近づいた」。オリジナル陶器の完成への手応えを感じた。
 新作は市内で取れた土を原料とする。白を基調とした陶器に色とりどりの模様を絵付けし、経済活動が盛んな郡山の生き生きした雰囲気を表現する。
 納得のいく作品が完成し次第、販売を始める。ブランドとして定着させ、地域活性化に一役買いたいという目標もある。
 昨年5月、郡山市に窯を設け、同時に地域住民らが対象の陶芸教室を始めた。住民との交流が深まるにつれ、原発事故でぽっかりと穴があいた心が満たされる気がした。「郡山の人に愛される作品を作りたい」と思うようになった。
 志賀さんは、浪江町で300年以上の歴史を誇る大堀相馬焼の窯元の十六代目。双葉高を卒業後、愛知県の瀬戸窯業高で陶芸に関する専門的な技能や知識を学び、20歳で家業を継いだ。粘土をいじりながら試行錯誤し、納得のいく作品を生み出す作業に魅力を感じた。平成21年には全国規模の美術団体「秋耕会」の作品展で入賞した実績を持つ。
 原発事故で浪江町から田村、二本松、本宮の各市に避難した後、郡山市に移り住んだ。避難生活が続き、一時は制作活動を諦めかけた。しかし、9年に他界した父で十五代目の喜延さんら歴代の窯元が受け継いだ伝統の技を生かしつつ、独自の作品を世に残したいと発起した。
 先代らに「今できることを本気でやれ」と言われている気がするという。大堀相馬焼の息吹を、新たな古里に根付かせる覚悟だ。「残された人生の全てを懸ける」。新たな挑戦が始まる。

【背景】
 大堀相馬焼協同組合によると、原発事故前に浪江町にあった25の窯元のうち約10窯元が県内外の避難先で生産活動を再開した。一方で、事故以来休業している窯元、廃業を決意した窯元も多い。制作者の高齢化や後継者不足など理由はさまざまだ。組合員からは「大堀相馬焼を守るためには行政や関係機関の長期的な支援が必要」との声が上がる。

カテゴリー:福島をつくる-未来への挑戦

志賀さんが手掛けた「あさか野焼」の湯飲みの試作品

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