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福島をつくる(39) 第4部 六次産業化 いいたていちごランド(飯舘)

「福恋いちご」の完成を喜ぶ佐藤夫妻=2月、飯舘村

<販路回復に手応え>
 飯舘村二枚橋地区にあるイチゴ生産会社「いいたていちごランド」のビニールハウスでは昨年9月、東京電力福島第一原発事故前と変わらず、大粒のイチゴが実っていた。原発事故による休業を経て出荷を再開させた社長の佐藤博(63)はハウス内で県農産物流通課副主査の若林真知子(31)と向き合った。
 若林はイチゴの甘酸っぱい香りを吸い込むと切り出した。「佐藤さんのイチゴを紅茶にしませんか」。県は風評払拭(ふっしょく)に向け、「フレーバードティー」と呼ばれるイチゴを乾燥させて作る紅茶の開発を検討していた。協力するのは国内外に148店舗を持つ紅茶・緑茶専門店の「ルピシア」だった。

 佐藤の脳裏にはイチゴの価格が下落した厳しい現実がよぎった。安全性を確保しても消費者を振り向かせるのは難しい。「分かりました」。ルピシアのブランド力を生かしたPR方法に魅力を感じた。
 県は原発事故後、本県農産物をアピールする取り組みをルピシアと進めていた。平成25年8月にはモモやブドウの風味がする紅茶を作り、首都圏の住民に振る舞った。ただ、短期間で準備したため、本県産の使用は見送られた。
 県内の果物を使えば、本県に対する消費者の印象はさらに良くなるはず-。第2弾の紅茶開発に向け動いていた若林は、避難区域の飯舘村でイチゴ栽培を再開したニュースを目にした。「佐藤さんのひたむきな姿を消費者に訴えよう」。ルピシアとの商品開発に取り掛かった。

 昨年12月、東京都のルピシア自由ケ丘本店で試飲会が開かれた。試作品として2種類の紅茶が並んだ。
 出席した佐藤や若林ら関係者が選んだのは、イチゴの風味がよりはっきりと伝わる味だった。異性に抱く恋心のような好感を、本県の農産物にも寄せてほしい。「福恋(ふくこい)いちご」と名付けた。
 今年2月、50グラム入りの600缶が完成した。県は復興行事で消費者に配っている。このうち、100缶をインターネットを通じてプレゼントする企画を発表すると、全国から応募が殺到した。その数は5414件に上った。
 予想以上の数字に、佐藤と妻の洋子(63)は目を見張った。「失った販路を取り戻せるのではないか」。佐藤の元には70缶が提供されていた。(文中敬称略)

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