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福島をつくる(40) 第4部 六次産業化 いいたていちごランド(飯舘)

収穫したイチゴを出荷用の容器に詰める佐藤=20日、飯舘村

<洋菓子店巡り受注>
 「飯舘でイチゴ栽培を再開しました。仕入れを検討してください」。飯舘村のイチゴ生産会社「いいたていちごランド」社長の佐藤博(63)は4月中旬、南相馬市にある洋菓子店事務所で店主に頭を下げた。4月から県内の洋菓子店を営業で回っていた。
 佐藤は避難区域の村で昨年7月にイチゴ栽培を再開し、二年目を迎えた。昨年は名古屋市の市場に出荷したが、今年はより高い収益が期待できる洋菓子店に卸したいとの一心だった。

 自身が栽培したイチゴを材料に紅茶・緑茶専門店「ルピシア」が開発したフレーバードティー「福恋(ふくこい)いちご」を常に持ち歩き、店主に配った。女性に人気があり、業界大手のルピシアを知らない洋菓子店はなかった。佐藤のイチゴを売り込むのに福恋いちごは、うってつけの手土産だった。
 効果は徐々に表れ始めた。「お願いするかもしれません」。足を運んだ先々でそんな言葉が返ってきた。飯舘村で栽培されたイチゴの安全性を不安視する人は誰もいなかった。ニュースで佐藤を知ったケーキ店から引き合いもあった。経営者が佐藤のビニールハウスを訪れ、見本としてイチゴの提供を依頼した。
 今月18日、佐藤の元に待望の知らせが届いた。ルピシアの紅茶を持って尋ねた洋菓子店からイチゴ5キロの注文がファクスで寄せられた。丹精込めて育てたイチゴを丁寧に箱に詰め、翌19日に送り出した。靴をすり減らし、不慣れな営業に歩いた苦労が報われた思いだった。

 佐藤が栽培するイチゴをフレーバードティーに加工する県の取り組みは終わった。効果を一過性のものにしないため、村は販路拡大に向けた支援に乗り出す方針だ。村は佐藤と話し合い、年内中には新たな対策を打ち出す。「消費者に村の農産物をアピールするには、継続が大切だ」。農政を担当している村復興対策課長の愛沢伸一(57)は強調する。
 「生産者は消費者と信頼関係を育む努力を惜しんではならない。生産者の顔が見える販売方法が今後、さらに重要性を増すだろう」。佐藤は風評にさらされてきた日々を振り返り、6次産業化(6次化)が農業再生の1つの手掛かりになると考えている。
 県内では、6次化商品の開発を地域活性化の起爆剤にしようとする動きも広がっている。(文中敬称略)

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