東日本大震災

「福島をつくる-未来への挑戦」アーカイブ

  • Check

福島をつくる(46) 第4部 六次産業化 いわき協議会(いわき)

農産物を加工品にする研究を続ける萩(左)と白石

<加工品の力を実感>

 いわき市の「Hagiフランス料理店」オーナーシェフの萩春朋(39)は平成23年6月、農商工連携に向けて市内の有志が集まる会合に講師として招かれた。講演終了後、市内小川町で農薬や化学肥料を使わない農業に取り組んでいたファーム白石代表の白石長利(34)から、真っ赤なトマトを差し出された。
 萩は口にして驚いた。「自然のおいしさにあふれたトマトだ」。トマトは食べやすく甘みが増す傾向にあるが、白石が作ったのは酸っぱさが十分に感じられるトマト本来の味わいだった。優れた料理人に与えられる農林水産省の「料理マスターズ」の1人である萩をうならせた。萩はこのトマトをきっかけに白石と意気投合した。

 会合から数日後、萩は白石の農場で、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の風評で収穫できないまま、旬の時期が過ぎて売れなくなったネギを何かに活用できないかと相談を受けた。萩は畑からネギを持ち帰り、早速、商品開発の検討を始めた。
 萩は加工品として比較的作りやすいドレッシングを選んだ。オーブンで焼いて軽くこげ目を付け、風味豊かに仕上げた。味見をすると、香りが高く、甘みが際立っていた。市場価値がなくなったとはいえ、白石のネギの品質の高さに変わりはなかった。
 23年秋までに、萩と白石は試しに200本を作ってみた。震災後に支援してくれた白石の友人らに配った。すると、思わぬ反響が続々と寄せられた。「おいしかった。お金を出してもいいから作ってほしい」

 2人は本格的な商品化に乗り出した。日中の仕事を終え、夜になると萩のレストランに集まった。頭にキャップをかぶり、加工に励んだ。完成品を容器に入れ、栓を閉めたり、ラベルを張ったりした。新しい挑戦に、2人の顔から自然と笑みがこぼれた。翌24年、「焼きねぎドレッシング」の販売にこぎ着けた。
 原発事故で野菜そのものが風評で売れなくなったが、加工品なら作れる。加工品の評判が良ければ、その材料となった野菜を食べてみたいという人も増えるはずだ-。2人は加工品開発に今後の農業の可能性を感じた。
 ネギに続き、萩が目を付けたのは、まだ熟していない青い段階のトマトだった。(文中敬称略)


カテゴリー:福島をつくる-未来への挑戦

「福島をつくる-未来への挑戦」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧