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福島をつくる(49) 第4部 六次産業化 果樹農業プロジェクト(郡山)

三菱商事復興支援財団郡山事務所で事業推進チームのメンバーと打ち合わせをする中川(左)

<果実酒造りが始動>
 郡山市のJR郡山駅近くにある10階建てのオフィスビル最上階に入居する三菱商事復興支援財団の郡山事務所。財団の事業推進チームのメンバーは2日、市内逢瀬町に10月完成予定の醸造施設(ワイナリー)に設ける試飲スペースの広さやカウンターの配置などに意見を交わした。
 「福島産ワインを飲んだ人に、原料のブドウも食べたいと思ってもらえるような施設にするぞ」。チームリーダーの中川剛之(39)は、福島の果実酒が地場産業として定着することを願いながら指示を出す。

 三菱商事は、平成23年3月の東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の発生直後から、本県をはじめ、宮城、岩手両県など被災地で復興支援に取り組んできた。24年3月には公益財団法人三菱商事復興支援財団を創設し、被災した学生への奨学金支給のほか、企業の事業再開や雇用創出への資金提供などに乗り出した。
 「福島の真の復興のためには何が必要か」。財団は原発事故で大きな打撃を受けた農業などの第一次産業に着目した。中川は昨年3月から郡山市を中心に県内各地の20軒以上の農家に足を運んだ。「各農家はいずれも自信を持っていい作物を作っている。ただ、付加価値づくりや商品のブランド化までは手が回っていない」。そう肌で感じた。
 農作物の中でも特に本県産果実は全国的に評価が高い。「これまで県内ではあまり盛んでなかったワインやリキュールなどの果実酒の醸造と加工、販売に地元と協力して取り組んではどうか」。中川が率いるチームは財団幹部に提案した。幹部の了承を得た上で、財団を設立した三菱商事にもプランを説明し、昨秋、理解を得た。
 地元の初期負担を軽減するため、財団が直接、10億円の資金を投じてワイナリーを整備する-。財団による復興支援事業として初めての試みだった。

 財団は今年2月、郡山市と農業振興に関する連携協定を結び、郡山事務所を構えた。ワイン醸造の専門家を含む約10人のスタッフが常駐している。
 今後、市と協力して社団法人を設立し、市内を中心とした10軒の農家からブドウをはじめ、モモ、ナシ、リンゴを買い取り、今秋からリキュール造りを始める。社団法人は将来的に、醸造や販売のノウハウを身に付けた地元の人々の手で運営するのが目標だ。
 「地元の人が面白いと思うプロジェクトでないと意味がないし、長続きしない」。中川は、震災と原発事故への風化が懸念される中、息の長い支援を続ける考えだ。2年後からはワイン製造に取り掛かる。市内ではブドウの栽培も始まった。(文中敬称略)

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