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福島をつくる(50) 第4部 六次産業化 果樹農業プロジェクト(郡山)

ワイン用ブドウの育成に汗を流す中尾秀明

〈産地化願い苗植栽〉
 郡山市中田町にある中尾ブドウ園。代表の中尾一明(63)からブドウ作りを受け継ぐ長男秀明(37)は4月中旬、ヨーロッパが原産の赤ワイン用品種「メルロー」、白ワイン用品種「リースリング」の合わせて90本の苗木を植えた。三菱商事復興支援財団と郡山市による「果樹農業六次産業化プロジェクト」として建設されるワイナリーに供給するためだ。
 いずれの品種とも生育は順調で、高さは既に30センチを超えている。「今シーズン中には、高さ180センチのブドウ棚まで届く」。秀明は、ブドウの茎を添え木に結び付ける作業に汗を流しながら、2年後の収穫に思いをはせた。

 同園では、一明が昭和50年から生食用のブドウ栽培を始めた。県果樹試験場の担当者から「土壌が粘土質で、生産に適している」とアドバイスを受けたのがきっかけだった。阿武隈高原の標高約300メートルに位置し、夏場の寒暖の差もブドウ作りに適していた。それまで水田や山林だった2・7ヘクタールをブドウ畑にした。
 果実の数を微妙に調整することで糖度の高さと粒の大きさを両立させた自慢の「高尾」は全国に評判が広がっている。電話注文による直売だけでも生活は十分に成り立つ。それでも、昨年11月に財団からプロジェクトへの協力を求められると、親子は迷わず、ワイン用品種の導入に踏み切った。
 「農業、特に米農家は販売価格の低迷で、単純に生産するだけで生活を維持していくのは難しい時期に来ている」。日大農獣医学部(現生物資源科学部)で植物資源科学を学んだ秀明は感じていた。「六次化の成功例を示すことで、郡山の農業の可能性を広げたい」との思いが、親子を新たな挑戦へと駆り立てた。
 市内では中尾ブドウ園を含む4軒の農家がワイン向け品種の栽培を始めた。

 財団は、農家から買い取ったブドウを原料に、2年後からワイン造りを始める。当面は年間1万2000リットル程度のワイン生産を目指し、5~7年後からの出荷を見込む。その後、契約農家を増やしながら生産量を拡大していく考えだ。
 新たにワイン用の栽培を始めた市内三穂田町の橋本農園の取締役橋本寿一(70)は、プロジェクトを呼び水とした担い手育成に期待を寄せる1人だ。「市内外からワイン用ブドウの生産を始めたいと思う若者が出てきてくれれば」
 農家がブドウ栽培に乗り出す一方で、ワイナリーの建設も進んでいる。(文中敬称略)

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