東日本大震災

「福島をつくる-未来への挑戦」アーカイブ

  • Check

福島をつくる(51) 第4部 六次産業化 果樹農業プロジェクト(郡山)

果樹農業六次産業化プロジェクトで設ける醸造施設の建設地=郡山市逢瀬町

<関連商品生む素地>
 三菱商事復興支援財団と郡山市による「果樹農業六次産業化(6次化)プロジェクト」で設ける醸造施設(ワイナリー)の新築工事地鎮祭が行われた5月19日。あいさつに立った郡山市長の品川萬里(まさと)=(70)=は「行政や経済界を挙げてプロジェクトの成功に協力させてもらう」と約束した。財団代表理事の野島嘉之(49)は地元の期待の大きさをあらためてかみしめ、「三菱商事の関連会社をはじめ、三菱グループの協力を仰ぎながら、いいものを作り、販売していきたい」と誓った。
 品川の言葉の背景には、市内の農業の担い手が年々、減少しているという現実がある。

 昭和55(1980)年の市内の農家数は1万2466世帯で、市内の総世帯数の8万611世帯に対して15.5%を占めていた。2010年世界農林業センサスによると、農家数は7676世帯、総世帯数の13万1925世帯に占める割合は5.8%と、農家の割合は30年間で3分の1近くまで下がった。市内の耕作放棄地は1431ヘクタールあり、実に東京ドーム約300個分に上っている。
 市は農業再生に向け、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故発生前の平成21年から市内各地の特産品を活用した6次化商品の開発を支援してきた。6次化を目指す農家と商工団体などを結び付ける交流会や、旧市町村単位の地区ごとに学習会を開催してきた。参加者が外部の専門家から6次化の先進事例などについて説明を受けたり、それぞれの地域資源を活用した6次化の事業計画を作ったりした。
 市の支援策に加え、各農家や小売店などの独自の取り組みで、大葉を使ったジェラートや放牧豚を原料としたソーセージや生ハムなど人気商品が誕生した。

 一方で、消費者の間で定着しない6次化商品も少なくない。市園芸畜産振興課長補佐の箭内勝則(47)は「買い手の気持ちを考えず、自分たちが作れる商品から始め、失敗する事例もある」と指摘する。財団のプロジェクトを、市内の農家や商工関係者らが6次化商品の付加価値づくりや販路開拓の手法を学ぶ好機にしてほしいと願う。
 プロジェクトが軌道に乗れば、ブドウなどを生産する農家も新たに必要になる。果実酒に合うソーセージや生ハム、野菜など、新たな6次化商品作りにまで派生する可能性もある。「消費と生産の好循環で、農業の未来が開けるのではないか」。箭内の期待は日増しに高まっている。
 県内では、各地で6次化商品開発の担い手が誕生している。(文中敬称略)

カテゴリー:福島をつくる-未来への挑戦

「福島をつくる-未来への挑戦」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧