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福島をつくる(52) 第4部 六次産業化 地域おこし協力隊(西会津)

加工場でミネラル野菜のかき氷シロップの改良に取り組む仲川

<特産品改良に意欲>
 新潟県境にほど近い西会津町の山あいに、町が運営する食品加工場がある。5月下旬、町地域おこし協力隊員の仲川綾子(33)はスプーンを口に運んだ。「よし、おいしくできた」。納得の味に自然と笑みがこぼれた。昨年夏に開発したミネラル野菜のかき氷シロップの改良に取り組んでいた。
 食品関連会社に勤務した経験を買われ、食品加工担当の隊員として委嘱を受けた。ちょうど1年前のことだ。以来、地元の特産品を使ったアイデア食品を次々生み出している。「食を通じて西会津の魅力を全国に発信する」と試行錯誤を繰り返す日々を送る。

 仲川は川俣町出身。平成14年に福島学院大短期大学部食物栄養科を卒業後、福島市の食品加工メーカーに入社した。主に県内外に出荷するデザートの企画開発に取り組んできた。フルーツソースやプリンなど、10年余りで手掛けたオリジナル商品は100点を超える。東京本社に異動した24年、当時交際していた夫の徳清(47)が暮らす西会津町に移住しようと思うようになっていた。「町でも食に関わる仕事に就きたい」。食品加工への情熱は衰えていなかった。
 一方、町は平成22年、特産品のミネラル野菜や、きのこを使った6次化商品の開発に乗り出していた。研修会を開いて「マイタケご飯の素」や「お焼き」などを商品化し、販売してきた。しかし、消費者が求める「売れる商品」を作るには、味のバランスやパッケージなどを洗練させる必要があった。「専門家を招き、もう一段階上を目指すべきだ」。当時、町農林振興課長だった佐藤美恵子(60)は研修会に限界を感じ始めていた。
 追い打ちを掛けるように23年3月、東京電力福島第一原発事故が起きた。風評により農産物の売り上げは急減した。25年、佐藤は総務省の地域おこし協力隊員制度に目を付けた。「食品加工を担う隊員の枠を確保してほしい」と、町の幹部が顔をそろえる政策調整会議で声を上げた。佐藤の願いがかない、26年1月、隊員の募集が始まった。
 同じころ、就職先を探していた仲川は町のホームページを眺めていた。「この仕事しかない」。すぐに履歴書を送った。26年4月に採用が決まり、12年間勤めた会社を辞めた。

 隊員となって1カ月がたった昨年6月末。会津地方特有の蒸し暑い日だった。ふらりと立ち寄った、道の駅にしあいづ交流物産館「よりっせ」の売店で、既製品のシロップを使ったかき氷が売られている光景を目にした。「ミネラル野菜のかき氷があったら面白いのに」。町の6次化商品開発事業「まち食コラボ」が始まった。(文中敬称略)

※地域おこし協力隊
 都市部の若者らが隊員として地方に住居を移し、地域振興のために働くことで、過疎地域の雇用創出や定住促進につなげる国の制度。総務省が雇用自治体に対し、隊員1人当たり年間400万円を上限に活動経費を支援する。期間は最長3年。県地域振興課によると、1日現在、県内では18市町村と県で計44人の地域おこし協力隊員が働いている。


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