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福島をつくる(53) 第4部 六次産業化 地域おこし協力隊(西会津)

ミネラル野菜のかき氷を販売する仲川(右)。「おいしい」の声に笑顔を見せる

<特産品で四季演出>
 西会津町地域おこし協力隊員の仲川綾子(33)は昨年7月、町特産のミネラル野菜を使ったシロップの試作に取り掛かった。果肉と野菜本来の味を残す工夫、甘さの調整...。約2週間後、トマト、アスパラガス、ブルーベリーの3種類の自信作が完成した。
 7月中旬から1カ月間、道の駅にしあいづ交流物産館「よりっせ」で販売した。「きれいな色」「甘くておいしい」。子どもたちは笑顔でかき氷を頬張った。野菜シロップのかき氷は話題を呼び、多い時で1日百食以上を売り上げた。「もっと西会津の食材の魅力を伝えたい」。仲川は商品開発への情熱が湧き上がるのを感じた。

 「四季折々の素材を生かした名物を作ろう」。地域の特産品を使って新たな食品を作り出す「まち食コラボ」と銘打った事業の中で、仲川が決めたルールだった。毎年秋になると、名峰・飯豊山の伏流水と澄んだ空気が育んだ黄金色の実りが町中で見られる。仲川は次の商品のテーマをコメに決めた。
 ただ、デザートは得意だが、主食となる商品開発は初めての経験だった。何を作れば良いか考えあぐねていると、町長の伊藤勝(65)が声を掛けてきた。「『こゆりちゃん巻きずし』はどうだろうか」。金太郎あめのように、切るたびに、町のキャラクター「こゆりちゃん」の顔が現れる-。西会津を知ってもらうにはうってつけだった。
 町産の新米が収穫された10月、仲川は加工場に10日以上こもり、試作を繰り返した。一番の課題は、思い通りの顔の形にならないことだった。伊藤と町職員らを交えた試食会でも「(顔を)もう少し似せられないか」「味が薄い」などと厳しい意見が飛んだ。
 直売所で巻物に合いそうなシイタケやニンジンを買い込んで調理し、色を付けた酢飯に巻き込んでみた。「おいしい。大丈夫だ」。3度目の試食会で、ようやく伊藤が首を縦に振った。
 11月に開かれた「西会津ふるさとまつり」の初日には、用意した60個が30分で売り切れた。仲川の名は「食べ物博士」として、少しずつ町民に知れ渡るようになった。

 町内のさゆり公園野球場でプロ野球の独立リーグ・ルートインBCリーグ公式戦が開かれた今月6日、仲川は改良を重ねたミネラル野菜シロップのかき氷を売っていた。「おいしい」の声に自然と笑顔になった。町も出店場所を確保するなど、地域活性化に向けて後押しする。
 仲川は第二の古里・西会津にこれからも住み続ける。地域おこし協力隊員の任期は最長3年。退任後は自分だけの食品加工場を持ちたいと考えている。「全国に西会津産6次化商品を送り出し、安全性やおいしさを知ってほしい」
 県内に移住し、新たな6次化商品を生み出そうと奮闘する新規就農者もいる。(文中敬称略)

カテゴリー:福島をつくる-未来への挑戦

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