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福島をつくる(55) 第4部 六次産業化 ななくさ農園(二本松)

製造拠点の一角で瓶にラベルを貼る関

<発泡酒に地元食材>
 二本松市戸沢の「ななくさ農園」代表の関元弘(44)は、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から約4カ月後の平成23年7月、念願だった発泡酒製造免許を取得した。
 関の免許は、ビールではなく発泡酒だ。酒税法の関係で、ビールの免許を取るには年間6万リットル以上の生産ノルマが課せられる。しかし、発泡酒は10分の1の6000リットル以上と参入するハードルが低かった。
 一方で、関には発泡酒にこだわる明確な理由があった。「地元の食材も使うことで、さらなる地域の魅力発掘につながるはずだ」

 原材料に占める麦芽の使用比率のほか、果物やハーブなどを使用することで酒税法上、「発泡酒」扱いとなる。関は、ここに着目した。世界各国には、多種多様な発泡酒がある。「誰にもまねできない独自ブランドを確立する」。夢が膨らんだ。
 商品名は「ななくさビーヤ」に決めた。農園の名称を盛り込み、酒税法上、「ビール」と名乗れないことから、親しみやすさを込めて「ビーヤ」とした。自宅脇の倉庫を改築し、製造拠点とした。
 全国各地の醸造関係者から指導を受け、23年12月に製造を開始した。畑で収穫した大麦のほかに、海外産の麦芽とホップ、風味を与えるハーブを加えた。麦芽の糖化、ろ過、煮沸、発酵作業などを経て同月、ついに発泡酒が完成した。芳醇(ほうじゅん)な香りに深みのある口当たり-。「第1号」を試飲した関は、静かにうなずいた。「大手にも負けない納得の仕上がりだ」
 当初は農園や近隣の道の駅で販売していたが、評判は口コミで広がった。現在は福島市のスーパーのほか、市内の飲食店とも取引がある。地元の農家などから頼まれ、イベント用に販売するナシやカキなど果物を使った発泡酒も手掛ける。「目指す形に近づいてきている」。地域振興が一番の目的だった関の目的は着実に前進している。

 原料となる大麦は10月ごろに種をまき、初夏に収穫する。発泡酒を仕込むのは農閑期の冬だ。
 日差しが照り付ける6月初旬、関は出荷する「ななくさビーヤ」の瓶にラベル貼りながら、5度目の発泡酒造りの構想を練っていた。330ミリリットルで500円と決して安くはない。品質を保ちつつ、価格を抑えることが課題だ。ただ、関は常に前を向く。「乗り越える壁が大きいほど、いい物が生まれる。まだまだ夢の途中」。琥珀(こはく)色の麦酒に、無限の可能性を感じている。
 自慢の一品をどう発信するか―。販路開拓は、六次化に携わる生産者の共通の悩みだ。(文中敬称略)

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