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【農地の放射性物質対策研究】 廃止方針に県反発 復興庁は「成果得られた」

 農地の放射性物質の除去や低減技術の研究開発事業をめぐり、復興庁が集中復興期間後に廃止する方針を示したことに対し、県は反発を強めている。復興庁は「成果は得られた」とするが、県は「避難区域を含めた営農再開に向けて必要性が高まる」とし、研究が途絶えることで、農業再生が遅れることを懸念。復興特別会計(復興特会)での予算措置の継続を求めている。

■緊急的
 復興庁は5月に公表した平成28年度から5年間の復興事業の基本方針で、「農地などの放射性物質除去・低減技術開発事業」を27年度限りで終了するとした。
 同庁によると、同事業には、23年度から27年度までに復興特会から約9億2000万円が拠出された。土壌中のカリウム濃度と農産物に移行する放射性セシウム濃度の関係性、あんぽ柿を加工した際の放射性物質の濃度変化などの研究成果が得られ、既に生産現場に生かされている面もある。
 同庁の担当者は「この事業は放射線の影響を考えて緊急的にやっていた。研究成果はある程度出ており、一定の役割を終えた」と説明する。

■実践これから
 県が同事業を活用して進めている研究内容は【表】の通り。いずれも県農業総合センターが、国立の農業・食品産業技術総合研究機構と連携して行っている。
 県農業振興課によると、各研究は実証段階で、避難区域での営農再開に向けた実践はこれからの段階だ。これまでの成果が無駄になりかねず、「今後、帰還困難区域などでの農業の再開に向けては、さらなる技術確立が必要不可欠」としている。
 県は「原発事故は国にも責任がある。本県の農業環境を回復させるためには復興特会で続けるべき」と反発し、あくまで全額国負担を求めていく構えだ。
 27年度は林業関係の技術開発で「森林における放射性物質拡散防止等技術検証開発事業」に1億円、水産関係で「放射性物質影響調査推進事業」に3億8000万円を復興特会に計上している。
 復興庁によると、いずれも28年度以降に事業を継続するのか、終了するのか方針が定まっていない。同庁の担当者は「必要性などを精査した上で判断したい」と話す。

■未解明部分多く
 25年度以降の野菜・果実や26年産米からは食品衛生法の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を上回る放射性物質は検出されていないとはいえ、地域によっては今なお出荷制限されている品目もあり、本県農業の再生までには相当期間を要するのが実情だ。原発事故で避難区域が設定された12市町村の27年産のコメの作付面積も、震災前の22年の2割程度までしか回復していない。
 こうした状況を踏まえ、専門家も国の方針に疑問を投げ掛ける。
 植物への放射性物質の移行などに詳しい福島学院大の杉浦広幸准教授は「放射性物質の移行調査などは未解明な部分も多く、まだまだ研究が必要で、中長期的に見守っていかなければいけない。打ち切るのではなく、復興特会で継続すべきだ」と指摘する。

【背景】
 復興庁は東日本大震災から10年間を復興期間とし、特に前半の平成23~27年度の5年間を事業を重点的に行う集中復興期間としている。5月12日、同庁は集中復興期間後の5年間の復興事業の基本方針を発表。被災者支援や原子力災害特有の課題に対応する事業などは引き続き復興特別会計で全額国費負担とした一方、「農地などの放射性物質除去・低減技術開発」や「県再生可能エネルギー次世代技術開発」などの事業は27年度限りで打ち切る考えを示した。また、国が全額負担する「原発事故由来の事業」の範囲が示されず、本県復興に与える影響は不透明なままとなっている。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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