東日本大震災

「福島をつくる-未来への挑戦」アーカイブ

  • Check

福島をつくる(56) 第4部 六次産業化 ワタスイ(須賀川)

社内会議でドライフルーツ商品を示す(右から)社長の渡辺と妻の晶子

<品質高め不安解消>
 6月初旬、須賀川市の食品製造業「ワタスイ」の社屋2階には渡辺徳之社長(43)をはじめ、主だった社員が販売会議に集まった。渡辺の妻で、主力商品の国産ドライフルーツ担当役員の晶子(42)が商品を手に説明した。「新しいタイプの商品です。来週から販売に力を入れたい」。商品リストを手にした社員が真剣な表情で一斉にメモを走らせた。
 ワタスイの主力商品は、県内産をはじめ、国内の果実を原料とした、自社ブランドのドライフルーツ「F●R」だ。「フクシマ フーズ リバイバル」。本県産の食品と農業の復活という願いを込めた。ハイセンスが売り物の「アフタヌーンティー」の全国約50店舗で販売されている。良い製品をどう売るか-。地道な努力と新しい発想が販路を広げた。

 社長の渡辺にとって忘れられない一言がある。東京電力福島第一原発事故後、全国の食品展示会でドライフルーツの出品を重ねていた時のことだ。何とか販路開拓の手掛かりを得たいと考えた渡辺は、出展料が割安になる被災者枠で自社製品をPRした。だが、予想以上に原発事故と放射線への消費者の「拒否反応」は強かった。「おいしそう」と目を輝かせながら寄ってきた来場者が「ふくしま」の名を耳にした瞬間、離れていってしまう。これが何度も繰り返された。
 そんな中、会場を訪れ商品を吟味したあるバイヤーがつぶやいた。「品物はこんなに素晴らしいのに...」
 励まされた思いの渡辺と妻の晶子は「品質そのものなら勝負できる」と知恵を絞った。「食品というよりギフトという切り口で販売できないか」。食品ならば大手のスーパーやコンビニでの販売が一般的だ。だが、F●Rは質が良い分価格は高めで、棚に並ぶ他の商品と価格競争になってしまっては勝ち目は薄い。何より自分たちが手塩にかけた商品を品物にふさわしい形で全国に広めたかった。

 25年以降、渡辺はギフトショーなどに出展の矛先を替えた。全国の著名店舗が集まる「47CLUB(よんななクラブ)」や西日本の百貨店の催事に出展し、次第に知名度を高めた。26年、F●Rブランドを知った関係者からの誘いを受け、日本で一番売れている商品が集まるとされる東京の複合商業施設「渋谷ヒカリエ」に期間限定で出展した。そこでアフタヌーンティーのバイヤーの目に留まり、全国販売にこぎ着けた。
 渡辺が終始一貫して重視してきたのが、対面販売のスタイルだ。県外出展の機会に合わせ、県外の消費者が抱く放射線への懸念に丁寧に答えてきた。それが食の安全を訴える県内生産者の思いを代弁することにつながると信じたからだ。
 渡辺はこれまでの多くの人々との出会いを振り返り「販路を広げられたのは『良いもの』を見極められる人々がいてくれたおかげ」と実感している。自分の価値判断とライフスタイルを大切にする消費者が「国産、無添加」のF●Rの良さを理解し、購入してくれたと感謝する。「今まで以上に素晴らしい製品を届けたい」。渡辺夫妻は新たな商品開発に挑んでいる。
 東京都内の県のアンテナショップも六次化商品の販路開拓に大きな役割を担っている。(文中敬称略)

※●はローマ数字の2

カテゴリー:福島をつくる-未来への挑戦

「福島をつくる-未来への挑戦」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧