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「賠償の底流-東京電力福島第一原発事故」アーカイブ

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第4部 精神的損害(27) 広野対象外に疑問 生活再建費支給望む

広野町で製材業を再開できず、避難先のいわき市で仮設住宅の管理人を務める田村さん

 広野町からいわき市に避難する田村弘一さん(51)は同市四倉町の仮設住宅を見回りながら「今は広野には戻れない。このまま、いわきに残って、管理人の仕事で培った経験を生かしていくしかない」とぼやいた。
 田村さんの仕事は県の緊急雇用創出事業による仮設住宅の管理人だ。仮設住宅がいつまで存続されるか分からない上に、半年ごとに契約が続くか打ち切られるか判断される不安定な立場にいる。
 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故前は広野町で製材業を営んでいた。双葉郡内の材木を仕入れ、おがくずにして茨城県の養豚業者に卸す。おがくずの寝床は豚にストレスを与えないとして好評だった。しかし、原発事故で放射性物質に対する不安が広がると注文はゼロになった。
 古里で製材業を再開するのは現段階で不可能だ。今は仕事がある、いわき市が生活の拠点となっている。田村さんが訪問する仮設住宅の町民からも「原発に近い広野町には遊びにいかないと孫が言う」「買い物ができる店も医療機関も少ない広野で暮らすには不安がある」などの声が聞こえる。古里に帰りたくても、帰れない事情がある。
 「事業を再開できず、広野に戻れない苦痛。避難区域を抱える双葉郡の他町の住民と大きな違いはない」と田村さんは言う。それでも精神的損害賠償は広野町民に入らない。多くの町民が疑問を抱えながら生活する。
 町は平成23年4月に旧緊急時避難準備区域に指定され、同年9月に解除された。精神的損害賠償は平成24年8月で打ち切られた。その後も避難生活を続ける広野町民にとって、居住制限、避難指示解除準備両区域に限って精神的損害賠償を平成30年3月まで支払うという政府の方針転換は、納得しきれない部分がある。
 「このままでは復興が前進しない」。遠藤智町長(54)は6月3日、自民党の東日本大震災復興加速化本部に対し住民の帰還促進に向けた生活再建支度金の支給を要望した。「町民が賠償に納得できない状況が続く限り、心の復興は果たせない。心が再生しなければ真の復興はなしえない」と考える。
 旧緊急時避難準備区域の解除から4年近くが経過する。震災前に約5500人いた町民のうち、町内で暮らすのは約半数にとどまる。一方、原発事故収束などに従事する作業員約3000人が町内で生活する。トラックが行き交い、双葉郡の復興拠点として活気づいて見える町内。遠藤町長は複雑な表情を浮かべながら町役場から古里を見下ろした。

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