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「賠償の底流-東京電力福島第一原発事故」アーカイブ

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第4部 精神的損害(29) 都路、地域差が拡大 住民融和へ模索続く

都路町の生活を支える仮設商業施設「ど~も」。コミュニティーの回復が急がれる

 東京電力福島第一原発事故で田村市都路町に設けられた緊急時避難準備区域(約870世帯)は平成23年9月、避難指示解除準備区域(約120世帯)は26年4月に解除された。地区内に避難区域がなくなり、少しずつだが住民の生活再建が進む。
 避難指示解除準備区域の解除と同時期に開設された仮設商業施設「Domo(ど~も)」は、都路に帰還した住民の食料品や日用品を求めるよりどころとして好評だ。今年1月には地区内に初めて大手コンビニエンスストアが出店。ファミリーマート田村都路店は住民や、双葉地方などで復興事業に当たる作業員らでにぎわう。
 精神的損害賠償をめぐり、住民間に生じていた摩擦も収束の兆しが見え始めていた。旧緊急時避難準備区域の住民への支払いが打ち切られた24年8月以降も続いていた避難指示解除準備区域への賠償が今年3月に終了したためだ。しかし、政府・与党の方針見直しで、避難指示解除準備区域の住民に限り、30年3月までの3年分の賠償が追加されることになった。両区域の賠償格差がさらに拡大する。

 「住民は誰も悪くないが、不公平感は募るばかりだ」。田村市船引町の船引第二運動場仮設住宅で自治会長を務める今泉信行さん(68)は肩を落とす。旧緊急時避難準備区域の都路町岩井沢地区で兼業農家を営み、妻と息子夫婦、孫と暮らしていたが、原発事故が当たり前の生活を一変させた。
 妻は避難先で他界した。息子夫婦や孫とは別々の生活が続く。今泉さんが勤めていた会社は震災の影響で倒産し、風評被害などによる作物の価格下落のため営農再開も断念した。精神的損害賠償が入らなくなってからは、富岡町で除染作業員として働き、生計を立てている。
 原発事故前と同じく住民同士がいがみ合わずに生活したいと、今年2月に東電と国に対して精神的損害賠償の支払いを求める訴訟を起こした。今泉さんは約700人の原告団の代表に就いた。「地域格差を解消したい」。1人当たり1100万円の慰謝料を求めている。

 都路町では地域が一体となって商工業活性化と雇用創出を目指す町六次産業化プロジェクトが進む。地元産の鶏卵「都路たまご」を使用した洋菓子を作り、特産品として販売する。店舗は都路町岩井沢の288号国道沿いに決まった。肝心の味は料理人や船引高生らの意見を取り入れながら思案中だ。今年の冬までには発売したい考えで、町の存続にとって必要な一大産業になってほしいとの期待が集まる。
 避難経験のある地域は放射性物質対策や就職など多くの課題を抱える。賠償格差は、住民では手の打ちようがないのが現状だ。冨塚宥●市長(69)は「賠償は国や東電が決めることで、格差是正を要望するしか手がない。都路に限らず、市民みんなの心を一つにする国の施策が求められる」と地域のコミュニティー回復を模索する日々が続く。

※●は日ヘンに景

カテゴリー:賠償の底流-東京電力福島第一原発事故

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