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「3.11大震災・断面」アーカイブ

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【アーカイブ拠点施設】事業主体定まらず 県、原発「国の責任」 国、整備の前例ない

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故による複合災害の記録、教訓を後世に伝える「アーカイブ(記録庫)拠点施設」の建設をめぐり、国と県の調整が難航している。国による建設・運営を求める県に対し、国は過去の災害で国が整備した前例はないとして難色を示しているためだ。県は東京五輪に合わせた開所を目指し、平成28年度からの事業着手を求めているが、先行きは不透明だ。

■なしのつぶて
 アーカイブ拠点は、平成23年の震災、原発事故の発生直後から県が国に整備を求めてきた。「原発事故、原子力災害からの復興は、国策として原子力政策を推し進めてきた国の責任。世界に例のない複合災害の教訓を発信するアーカイブは、国の施設として整備すべきだ」。県文化スポーツ局の担当者は言葉に力を込める。
 施設整備の必要性は、国、県などでまとめた福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想にも盛り込まれた。しかし、誰が設置し、運営するかは明記されていない。
 県はイノベーション・コースト構想関連の会議や、毎年度の国の予算編成に向けた要望活動などでたびたび、国による整備を訴えているが、なしのつぶてだ。

■難色
 国がアーカイブ拠点の事業主体となることに難色を示すのは、国内の過去の災害で前例がないためだ。経済産業省福島産業復興推進室の担当者は「これまでに前例がなく、現段階では何とも言えない。イノベーション・コースト構想の中で、他の拠点整備などと合わせて総合的に検討していきたい」と繰り返す。
 神戸市の阪神・淡路大震災記念「人と防災未来センター」は、兵庫県が約120億円をかけて整備した。新潟県中越地震に関する複数の施設も、県と長岡、小千谷両市などが機能を分散させて設置しており、国は直接関与していない。太平洋戦争で原爆が投下された広島、長崎両市の戦没者追悼施設は国が建てたが、資料館は市が設けた。
 岩手、宮城両県でもアーカイブ拠点構想はあるが、市町村が主体で、国による整備は想定されていない。
 県幹部の一人は「原発事故は特殊な災害で、前例踏襲はそぐわない」と指摘。「原子力災害を国の責任として後世に残すことへの、ためらいも透けて見える」と不満を示す。

■正念場
 県は、32(2020)年の東京五輪に合わせた開所に向け、28年度の基本構想作成、29年度の実施設計、30年度からの建設開始を想定している。国の28年度予算概算要求に調査費など関連費用を計上するよう要望している。
 県の有識者会議は今月末にアーカイブ拠点に必要な機能などを盛り込んだ報告書をまとめ、国に提出する。国は報告書を踏まえた上で、事業主体や財源など設置・運営の在り方について県と協議を進める方針で、県にとって、これからが正念場となる。

【背景】
 県はアーカイブ拠点施設の機能を検討する有識者会議(会長・小沢喜仁福島大副学長)を4月末に設置した。有識者会議は施設の延べ床面積を、阪神・淡路大震災記念「人と防災未来センター」とほぼ同じ規模の約1万2700平方メートルと見込む。「展示・交流」「資料」「研究」の各エリアを設け、資料の収集・展示・保存、交流、研究・教育の拠点とする考え。整備費用、財源は未定。県は、双葉、浪江両町にまたがる県復興祈念公園への併設を検討している。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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