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【県グループ補助金】「新分野」21社採択 商品開発や宿舎建設認定

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故で被災した中小企業や商店の再建を支援するグループ補助金で、県は今年度新設した対象枠「新分野事業」に21社を初採択した。これまでは工場や機械などの復旧に限定してきたが食品業者の新商品開発や製造業の従業員確保に向けた宿舎建設などを新たに認めた。事業再開の後押しになると歓迎する声がある一方、既に原状復旧を完了した企業は新分野事業の対象外となるため、追加支援を求める声が上がっている。

■対象外企業 追加支援求める

■挑戦後押し
 新分野事業枠では、新商品開発や宿舎建設のほか、新市場開拓調査、高性能の生産機械導入などにも補助金を活用できる。施設を復旧させるだけでは事業再開や売り上げ回復を見込めないことなどが採択の条件となる。
 機械設備や工場など建物の復旧費を最大4分の3まで補助していた既存制度と同程度の金額まで補助を受けられるのが特長だ。県は「事業再開と売り上げ回復を促すため運用を改善した」と狙いを説明する。
 相馬市のサンエイ海苔など5社でつくる相馬食料品製造販売グループは、原発事故の風評で海産物の売り上げが落ち込み、震災前の水準に回復していない。そこで、新分野事業枠を利用して調理の手間が掛からない水産加工品などを開発・製造し、活路を見いだしたい考えだ。同社の担当者は「挑戦への後押しになる。年度内に新商品を開発し取引先を拡大したい」と歓迎する。

■移転しても対象
 原発事故で避難区域から移転した企業も支援対象となる。原発事故後、富岡町から相馬市に本社機能と生産拠点を移したプラスチック製品成形用金型製造・販売「フジモールド工業」は、補助金で従業員用の宿舎を建設する予定だ。
 従業員十数人が身を寄せる相馬市内の仮設住宅は、使用期限が平成28年3月までだが、市内のアパートなどは復興関係の作業員らで満杯。自社宿舎を建てなければ人材が流出する恐れがあった。同社担当者は「補助がなければ宿舎建設に踏み出せなかった」と評価する。ただ、資材高騰や建設作業員不足などの影響で、来春までに宿舎を完成できるかは見通せないという。

■見直しを検討
 既にグループ補助金で工場や施設の復旧を終えた事業者は、「二重補助」となるため新分野事業枠が利用できない。双葉郡の製造業者は「設備などは整ったが、顧客や商圏が戻らず、厳しい経営が続く。補助対象をもっと早く拡大していれば事業再建の選択肢が変わっていた」と不満を隠さない。その上で、新事業進出に向けた新たな支援の必要性を唱える。
 制度の使い勝手の悪さを指摘する声も根強い。県商工会連合会の遠藤秀樹事務局長も「グループの参加事業者が少ないと採択されにくい傾向にある」と国や県に要件緩和を求めている。
 避難区域の産業再生を目指し国、県、民間企業で発足した福島相双復興官民合同チームは、12市町村の約8000事業所を個別に訪問し、要望などを聞いている。内閣府担当者は「事業者の意向を踏まえた上で年末までにグループ補助金の運用の見直し、補助額の積み増しを検討したい」と前向きな姿勢を示す。
 ただ、政府は避難区域の産業再生に投入する予算規模を明示しておらず、事業者らの要望がどこまで反映されるかは不透明だ。

■背景
 グループ補助金(中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業)は震災と原発事故で被災した中小企業や商店が施設・設備の復旧・整備を進めるため、県が平成23年度、国費と県費を基に創設した。補助率は中小企業で4分の3以内、中小企業以外で2分の1以内。26年度末までに県内の3478社に約1044億円の交付が決定したが、635社が補助金を活用できずに繰り越しや再交付の措置を受けた。販路や商圏の喪失、作業員不足、資材高騰などを背景に事業再建に踏み出せない状況がある。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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