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【県技術職人材不足】来春採用確保半数 農業土木初の再募集

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復旧・復興業務に必要な県技術職の人材不足が深刻化し、被災地の道路やほ場の整備に遅れが生じかねないと懸念する声が出ている。来年春の採用(大卒程度)は土木分野に続き、農業土木分野も初の再募集となった。2つの職種を合わせた充足率は約5割にとどまる。県関係者からは人材確保のため待遇面の改善が必要との意見もあるが、実現には制度的な壁があり苦慮している。

■支障
 県によると、「農業土木」は採用枠14人に対して15人が受験し、10人が合格した。今春は12人の採用を予定していたが、実際に確保したのは3分の1の4人。業務に支障が出かねないと判断し、今回は再募集に踏み切った。
 「土木」は採用枠25人に対して28人が受験し、合格したのは11人だった。
 県の技術職の中で人数が多い「農業土木」「土木」を合わせると、採用予定は39人となる。合格者は21人。再募集は2日から受け付けている。始まって間もないこともあり、まだ応募は少ないという。

■懸念
 土木分野の技術職は専門知識を生かし、道路整備の場合だと工事の設計・発注から現場監督、完成後の点検まで一貫して携わる。国を相手に交付金や補助事業に関する予算交渉、調整なども行う。
 震災後は津波被害を受けた堤防の修復などの業務が増えた。道路整備では、中通りと浜通りを結ぶ主要な国道と県道の8路線を復興のための重要路線「ふくしま復興再生道路」として平成30年代の早期に完成させたい考えだが、人手の足りない状態が続けば計画に遅れが出る可能性もあると担当者はみている。避難地域の産業再生や観光誘客に影響を及ぼす恐れもある。
 農業土木分野では、相双地方の農業基盤整備への影響が懸念される。避難区域外と避難区域の一部で津波被災農地の復旧やほ場整備が本格化しているためだ。県相双農林事務所の担当部署は約80人の技術者を抱えるが、このうち約半数を全国の都道府県からの応援や最長5年の任期付き職員が占める。復旧作業の終了までには長期間を要するとみられ、県は「自前の技術者を確保できなければ、作業の進捗(しんちょく)に支障を来す」と危機感を強める。

■困惑
 県は応募が少ない理由として、復興事業や東京五輪を見据えた民間建設業者の採用意欲の高まりが背景にあると分析している。
 土木工学科がある日大工学部(郡山市)では震災以降、建設業の求人が増加している。高橋史典就職指導課長は「公務員は専門の試験勉強が必要な上、合格が決まるまで時間がかかる。内定が早くもらえる好条件の民間企業を選ぶ学生は少なくない」と実情を説明する。
 県は、このような状況も踏まえ、対応策を検討する方針。県関係者からは「民間企業に見劣りしない処遇面の改善についても検討が必要」との指摘もあるが、制度を変更するのは容易でない。
 県は給与条例に基づき、特に採用が困難な医師や獣医師に限り初任給調整手当を上乗せしている。ただ、人事課は「土木、農業土木の技術職は国家資格でない上、医師らより人材そのものが多いため、採用が『特に困難』とは判断できない」としており、あらたな方策はまだ具体化していない。県は従来から実施している職員による出身校でのリクルート活動などに力を入れている。

【背景】
 震災後の平成24年度に行われた土木技術職の採用試験では、42人の採用枠に対し採用が25人で17人も少なかった。翌25年度は採用枠と同じ32人を確保したが、26年度は30人に対し23人にとどまった。農業土木技術職は24、25年度とも採用枠とほぼ同数の人数を確保したが、26年度は12人に対し4人となった。2次募集の受け付けは23日まで。詳しくは県人事委員会のホームページへ。

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