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「賠償の底流-東京電力福島第一原発事故」アーカイブ

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第5部 財物(33) 避難先の新築困難 追加でも資金足りず

東電から届いた賠償の書類を見る男性。今後の生活への不安が残る

 二本松市にある浪江町役場二本松事務所に寄せられる宅地や家屋の財物賠償に関する問い合わせは後を絶たない。産業・賠償対策課賠償支援係の3人が連日対応に追われている。主任主査兼係長の鈴木清水さんは「相談に来る町民の生活環境、状況はさまざまで正直どう助言していいか困っている」と打ち明ける。
 その中でも増えている相談が、避難先に家を建てるには賠償金だけでは不十分という問題だ。「事故当事者の東京電力の責任で、避難前の自宅のようにくつろげる空間が確保されるべき」との声は尽きない。
 東電は平成26年7月、宅地や家屋の価値損失に対する賠償金だけでは新たな住居を購入できない避難者の負担軽減のため、追加賠償(住居確保損害の賠償)を始めた。避難前に住んでいた住宅の想定新築価格と事故前価格の差額の75%を追加で支払う内容だが、不足分を埋め切れないのが現状だという。

 福島市で避難生活を送る同町の男性(51)は体が不自由な80代の母親と同居している。介護が必要で、仕事にも出られない。今は2人分の精神的損害賠償を頼りに家計を維持している。
 母親の体調管理のため現在、賃貸住宅に住んでいる。今後は医療機関に近く利便性の良い都市部に一戸建て住宅を建てたいと考えている。ただ、追加賠償を受け取っても、新居には手が届かない。
 「浪江町と避難先の土地の差額、東京五輪に向けた建設ラッシュに伴う建築費用の高騰などが考慮されていない。東電は再調達の現状を理解しているのか」。男性は憤る。

 子育て世代からは住宅ローンの相談が舞い込んだ。待望の新居を購入してから1年後に避難を余儀なくされた。多額の借金を抱えた。
 財物賠償の支払いを受けたが、ローンを完済できなかった。一方、子どもの教育環境を考え、避難先の都市部に一戸建て住宅を購入。新たな借金を背負った。「子どものためだから仕方がない。しかし、失った自宅を補うだけの賠償は得られないのか」との訴えだった。
 町議会は今年4月、東電と政府に「個人によっては(住宅の)再調達価格に及ばない。生活再建できる財物賠償の確保を求める」と要望した。半年後の今も具体的な回答や動きはない。
 議長の吉田数博さん(69)は「原発事故で町民は全ての生活を奪われた。原発を造ったのは東電にほかならない。東電の対応は理不尽極まりない」と強い口調で語った。

カテゴリー:賠償の底流-東京電力福島第一原発事故

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