東日本大震災

「福島をつくる-未来への挑戦」アーカイブ

  • Check

福島をつくる(71) 第5部 酒づくり 県酒造組合会長 新城猪之吉氏に聞く 独自の酒米不可欠

しんじょう・いのきち 会津若松市出身。慶応大法学部卒。平成6年から末廣酒造社長。17年から会津若松酒造協同組合理事長、22年から県酒造組合会長、26年から日本酒造組合中央会理事・東北支部長。65歳。

 県内の清酒が世界的にも高い評価を受けるようになった要因や今後の課題、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの風評払拭(ふっしょく)に酒づくりが果たす役割などを、県酒造組合会長の新城猪之吉氏(65)=末廣酒造社長=に聞いた。


 県内の酒づくりの技術が向上したのは、清酒アカデミー(県清酒アカデミー職業能力開発校)の開校で担い手育成の好循環ができたことが大きい。岩手県の南部地方の杜氏(とうじ)に任せ、県内出身の杜氏がなかなか育たない現状に、先代の新城猪之吉(故人)らが危機感を抱き、当時、県酒造組合技術委員長だった佐藤弥右衛門氏(64)に学校設立を提案したことから動きだした。
 アカデミーで、データを使って分かりやすく指導することで高水準の酒づくりができるようになった。全国新酒鑑評会に出品するための吟醸酒の品質が上がっていくのに伴って普通酒の品質も向上していった。
 最近では、蔵を継がずに働いていた蔵元の子どもたちが本県で酒づくりに関わるためにアカデミーで学ぶ例が増えている。以前は一度、他の業種に就いてしまうと、その後、酒づくりに関わりたいと思っても勉強する環境がなかった。後継者不足が酒づくりをやめてしまう大きな要因となっている現在、アカデミーの存在は小さな酒蔵でも担い手を確保できる良いきっかけづくりになっている。
 アカデミーの生徒は卒業後も拠点の県ハイテクプラザ会津若松技術支援センターとの強いつながりを持ち続ける。センターの醸造・食品科で酵母の性質の分析や相談がしやすくなり、連携を取りながら自信を持って独自の技術開発ができる。


 首都圏での県内の日本酒の認知度はまだまだ低い。福島ブランドをより強固にするには、全国新酒鑑評会の金賞受賞数日本一を続けなければならない。日本だけではなく、世界の市場に目を向けることも大切だ。約20年前からイギリスやアメリカ、フランスなどで販路拡大を図ってきた。海外の品評会で本県の日本酒が好成績を収め、徐々に浸透してきている。酒を良い状態で届けるため、保冷コンテナなど長距離輸送の品質管理が重要になる。
 これからの酒づくりの課題の1つとして原材料の酒米の開発がある。県が独自に開発した酒米に「夢の香」がある。さらに高みを目指すためには最高級品種の「山田錦」に代わるような品種の開発が不可欠だ。「夢の香」は大粒で心白(しんぱく)があり、酒づくりに必要な条件を満たしているが、多収穫米のため一粒一粒の品質に向上の余地がある。北海道や山形県など県外では次々と「山田錦」並みの米の開発が進んでおり、県も取り組みを強化すべきだ。


 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の風評を払拭するには、県内の酒蔵が県内の米で造り上げた高品質の日本酒を提供することが最も効果を発揮する。日本酒の「乾杯条例」が5市町村で定められている。業界としては、県民を挙げて日本酒を応援してもらうため、県に乾杯条例を制定してほしいと考えている。県全体の関心をさらに高め、福島の日本酒を世界に羽ばたかせていきたい。
 =連載「福島をつくる」は終わります=

カテゴリー:福島をつくる-未来への挑戦

「福島をつくる-未来への挑戦」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧