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雫神楽30年ぶり復活 亡き友の約束果たす 正月披露

神楽復活へ臨む団長の高田貴浩さん(前列左)ら団員たち

■原町・雫(しどけ)青年団員

 東日本大震災の津波で住民25人が犠牲になるなど甚大な被害を受けた南相馬市原町区の雫(しどけ)地区に伝わる神楽が約30年ぶりにお正月に復活する。雫青年団の団員が津波の行方不明者捜索中に神楽の道具を発見し、「地域の元気と希望を取り戻すきっかけにしたい」と準備を進めてきた。

 「お先に立たっしゃるは伊勢天照皇大神宮...」。28日夜、雫集落センターに威勢のよい口上が響いた。雫神楽は大きな獅子頭で荒々しく舞うのが特徴だ。20代から30代の団員が汗だくになりながら復活披露に向けて練習に励んだ。
 神楽の道具を見つけたのは青年団長の高田貴浩さん(34)。震災直後の平成23年3月下旬、行方不明者を捜していた時に津波による流失を逃れた同センターの押し入れにあった獅子舞の頭と「目が合った」。津波の犠牲になった青年団の仲間、高田憲幸さん=当時(32)=と交わした約束が頭に浮かんだ。いつか俺たちで(途絶えている)神楽をやろうな-。
 貴浩さんは不明者捜索で多くの遺体と対面し、打ちひしがれていた。「元気を出せ」。獅子頭を通じて憲幸さんからげきが飛んだ気がした。「若い自分たちが地元のために何かをしなければならない時だ」。すぐに青年団の仲間に声を掛け、仲間6人で復活に向けて動きだした。
 神楽は100年ほど前から地域に伝わるとされ、地元の若者が正月に地区にある津神社で奉納するのが恒例だった。しかし、若者の減少で昭和58年を最後に途切れた。現在の青年団に経験者はいない。残っていた映像から獅子舞の動き、笛や太鼓の音色、口上などを自力で習得。青年団OBら経験者の指導も仰いで技量を高めた。
 地域住民も復活を歓迎する。雫行政区長の松岡克雄さん(67)は「本当にうれしい。震災後に避難した世帯も多いが、再び絆が強まる契機になるはず」と期待した。団員を指導した高田光定さん(62)は「ここに住んでいて良かった。亡くなった人たちにも見せてやりたかった」と感慨無量の面持ち。
 貴浩さんは「『まずは行動することが大切』ということを実感した。神楽を通じ地域のつながりを取り戻したい」と熱く語る。
 神楽は1月2日午前8時ごろから津神社で奉納した後、同センターの慰霊碑前でも舞う予定。雫青年団は毎正月の上演を継続して歴史や文化を次代に継いでいく。

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