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第6部 ADR・訴訟 浪江(41) 制度見直しの時期 現状踏まえた指針を

住民説明会で参加者の声に耳を傾ける浜野弁護士。原賠審に解決の責任を求める=19日

 浪江町民が精神的慰謝料の増額を求めた裁判外紛争解決手続き(ADR)をめぐり、19日に郡山市で開かれた町の住民説明会。原子力損害賠償紛争解決センターが示した和解案に対し、東電は拒否を続け、和解への道のりは険しさを増している。
 説明会に参加した町民を前に、町支援弁護団事務局長の浜野泰嘉弁護士(42)=東京=は「皆さんの思いを胸に、決して諦めない」と言葉に力を込めた。慰謝料の増額を実現させる決意とともに、東電へのいら立ちがにじんでいた。
 浜野弁護士は「東電がセンターの勧告にも応じないのであれば、上部組織の原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)が責任を持って和解を成立させるべきだ」と話す。原賠審が賠償額の最低限の基準とされる指針を改定し、精神的慰謝料を引き上げれば、東電も従う可能性が出てくる。

 町内の現状を見て適切な処置をしてほしい―。町は9月上旬、原賠審とセンター総括委員会に要請書を出し、和解案に重みを持たせる対応を求めた。
 今月4日、原賠審の能見善久会長が浪江を含む4市町村を視察した。町は好機ととらえ、町内の面積の8割が帰還困難区域にある厳しい避難状況を訴えた。
 原賠審の事務局を担う文部科学省原子力損害賠償対策室は「被災地の現状を定期的に確認する活動の一環。すぐに指針を見直す動きは出ていない」と説明する。ただ、町支援弁護団は年明けにも原賠審が開かれ、何らかの動きがあると予想する。

 福島大の教員でつくる原発賠償ADR研究会の共同代表を務める富田哲教授(61)=行政政策学類=は「ADRは当事者双方の同意が基本。一方が拒否すればそれまで」と制度の限界を指摘する。原賠審の指針を根拠に、東電が基準を超える金額の支払いを拒むのは仕方ないとの見方も示す。
 町民が慰謝料の増額を強く望むのであれば「判決によって支払いが強制執行される裁判が有力な選択肢になる」と語る。ただ、訴訟の手続きは煩雑で新たな負担が生じかねない。
 現在の指針の内容にも疑問を投げ掛ける。慰謝料の月額10万円は事故直後の平成23年6月に原賠審が第二次指針追補で示した。「交通事故と同じように半年もすれば大半は元通りになると考えて算出した。長期避難を前提としておらず、現状を踏まえた数字に改める必要がある」と強調する。
 原発事故から丸5年となる。浜野、富田両氏は、政府がADRや指針を検証し、避難者の生活実態に即した賠償制度に見直す時期を迎えていると訴える。=第6部「ADR・訴訟 浪江」は終わります。

カテゴリー:賠償の底流-東京電力福島第一原発事故

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