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【新設の企業立地補助金】 「浜通り一律」見通せず 避難区域外 いわき、相馬、新地 焦点

 平成28年度政府予算編成が大詰めを迎え、新設される「自立・帰還支援企業立地補助金」の対象範囲をめぐる綱引きが激しさを増している。経済産業省などは東京電力福島第一原発事故で避難区域が設定された12市町村にいわき、相馬、新地の3市町を加えた浜通りなどの15市町村を対象とするよう要望。財務省などは12市町村に限定すべきとの姿勢だ。「最終的には政治決着」との見方も出始めている。

経産、財務省で綱引き

■産業集積の呼び水
 新補助金は被災者の働く場を確保し、雇用を生み出すことで住民の帰還と生活再建を後押しするのが狙い。補助率も従来より厚くする。経産省が県などの要望を受け、金額を明示しない事項要求として来年度予算の概算要求に盛り込んだ。
 経産省が15市町村にこだわるのは、避難区域を抱える浜通り全体の産業再生には長期的な取り組みと膨大な予算が必要になるためだ。特に浜通りをロボットや廃炉技術の研究開発拠点とする福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想は安倍晋三首相の肝いりで、浜通り再生の原動力となり得る。企業立地や産業集積の呼び水となる補助金は欠かせない。
 避難区域外のいわき、相馬、新地の3市町には多くの事業所が避難している。工場や物流施設、商業施設、試験研究施設、コールセンターなどの立地や整備にも活用できる新補助金は、避難先での新事業の展開などを後押しするとみられている。

■隣県との整合性
 財務省などが12市町村に限定すべきと主張する背景には「財政負担はもちろん、隣県との整合性の問題が大きい」(政府関係者)という。
 いわき、相馬、新地の3市町を対象に加えると、宮城や茨城など隣県の津波被災市町村からも同様の支援を迫られる可能性がある。そうなれば、予算が増すばかりか、「自立・帰還支援」の名目で県内に特化した新補助金の枠組みが揺らぐと懸念されている。
 政府関係者によると、財務、経産両省は互いに引く様子を見せず、折衝の緊迫度が増している。「予算の財務省原案が発表される直前までもつれるかもしれない。そうなれば官邸も巻き込んでの政治決着もありえる」との見方が強まっているという。

■企業誘致に不可欠
 補助対象に入るか、入らないかは地元市町にとって大問題だ。
 いわき市は3日、高木毅復興相に対象区域にするよう直接要望した。高木復興相は「関係省庁と議論し、市の財政負担を考慮しながら対応したい」との発言にとどめた。
 同市北部の「いわき四倉中核工業団地」は、イノベーション・コースト構想で中核的な産業集積地の一つに想定される。資材高騰や作業員不足などを受け、進出をためらう企業がある状況を踏まえ、清水敏男市長は「新補助金は企業誘致の上で不可欠」と強調している。
 一方、新補助金の創設に伴い、今後の在り方を検討していた従来の津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金も完全結着に至っていない。一時は中通りや会津地方を対象から外す議論もあったが、引き続き県内全域が対象になるとみられている。ただ、補助率など不透明な部分が残る。

【背景】
 従来の津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金は本県と青森、岩手、宮城、茨城各県の津波浸水区域と原子力被災地域が対象。県内では4月末までに181社に843億円が交付されたが、政府は費用対効果や財政状況などを踏まえ、補助対象を原子力被災地域の12市町村に限定する方向で検討を開始。県や市町村などが反発し、いわき、相馬、新地を加えた15市町村の補助率を拡充する新たな制度を創設するとともに、県内全域での補助を継続するよう求めた。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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