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【住宅の工事単価】 浜通り2割超上昇 被災者の生活再建に影響 人件費や資材高騰

 県内の住宅価格が浜通りを中心に上昇している。今年度の1坪当たりの工事単価は浜通りが62万3000円で震災前(平成22年度)の50万1000円より2割以上も上昇した。県平均も2割近く伸びて59万4000円となっている。東日本大震災や東京電力福島第一原発事故の復興事業増加に伴う人件費や資材価格の高騰が背景にあり、被災者の住宅再建への影響などが懸念される。


■公共事業が増加

 工事単価は新築した建物の1坪当たりの本体価格で、県地域型復興住宅推進協議会が調査した。浜通りの市町村と中通り・会津の各市町村の平均工事単価推移は【グラフ】の通り。震災前の浜通りは中通り・会津よりも低い傾向にあった。しかし、震災後は上昇が続き、今年度は中通り・会津の57万4000円よりも約5万円高い。中通り・会津も上昇傾向にあったが、今年度は前年度をわずかに下回った。
 県や協議会によると、復興事業や全国的な公共事業の増加によって、コンクリートなど住宅の基礎部分に使う資材が不足し、材料費が跳ね上がっている。型枠や鉄筋工などの作業員も不足し、人件費の高騰につながっているという。
 宮城、岩手の両県も上昇傾向にあるが、県内に比べてそれぞれ3万円程度低い。

■二重苦

 今後は消費税率引き上げ前の駆け込み需要が予想される。東京五輪・パラリンピック関連の工事も加わり、工事単価がさらに高くなる可能性がある。
 津波で自宅が被災し、いわき市の災害公営住宅で暮らす70代男性は仮換地で2年後に宅地を入手する。「建設費用が高く、新築すべきか迷っている。高齢なので、安くなるまで待てない。何らかの支援が必要だ」と表情を曇らせた。
 浜通りでは地価の上昇も著しい。協議会は「土地を購入して家を建てる場合は負担増が2倍となる」と指摘する。

■打開策見えず

 工事単価をつり上げている人件費を抑えるためには、高騰の要因となっている人材不足の解消が欠かせない。県は今年度から工務店間で作業員を融通し合う「マッチングサポート制度」を始めた。しかし、利用実績は伸びず、制度の普及が急がれている。
 降雪期に仕事が減る会津地方の作業員を浜通りに派遣しようとしても、除染や復興事業の作業員が多く、宿舎に空きがない。車などで通うと、人件費に交通費などが加わり、工事単価がさらに膨らむ。
 協議会は「行政が宿舎を増やすか、人件費を補助すれば工事単価は抑えられる」と訴える。これに対し、県建築指導課は「民間の事業であり、対応は難しい」と手をこまねいている。打開策が見えない状況で工務店関係者から「このままでは住宅確保を断念する被災者も出てくるのではないか」との声も出ている。


※住宅実態把握調査
 福島、宮城、岩手の3県の地域型復興住宅推進協議会が各県の住宅供給体制や価格などの推移を把握するために平成25年から毎年、調査している。今年度は7月中旬から8月上旬にかけて実施した。県内では工務店など住宅の木造新築工事などを手掛ける91社を対象に実施し、32社から回答を得た。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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