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第6部 ADR・訴訟 浪江(39) 公平性欠ける内容 東電は和解案を拒否

東電に理解を求める馬場町長(中央)ら。東電の拒否姿勢は今も変わらない=平成26年7月

 浪江町民が東京電力福島第一原発事故に伴う精神的慰謝料の増額を求めた裁判外紛争解決手続き(ADR)で、原子力損害賠償紛争解決センターは平成26年3月に月5万円増額の和解案を示した。町は約1カ月かけて支援弁護団と対応を協議した。月25万円増額の要求額には届かないが、避難する町民の苦しみをくみ取った点を評価し、和解案受け入れの方針を固めた。
 しかし、町賠償支援係長の鈴木清水さん(43)の不安は消えなかった。「果たして町民は納得するのだろうか」。祈るような気持ちで和解案受諾への同意を求める文書を申し立てた全町民に郵送した。
 驚きの結果が出た。ほぼ全員が同意するとの回答だった。町は26年5月26日、和解案に応じると発表した。「これで賠償も1つの区切りを迎えられる」。鈴木さんは安堵(あんど)した。だが、それもつかの間のことだった。


 6月、東電が和解案への回答期限を約1カ月延ばした末に示したのは「拒否」だった。
 理由の1つに、ADRの特徴である個別事情を考慮していない点を挙げた。原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)は、被害状況が全員一律と限らないため、請求者が指針の賠償額に納得しない場合、東電と個別に協議するよう求めている。東電は和解案が「申立人の個別的、具体的な事情ではなく、全ての避難者に共通して認められる事情に基づいている」と指摘した。
 さらに、慰謝料の増額は「原賠審の中間指針から懸け離れ、他の避難者との公平性が保てなくなる」とした。避難生活の長期化に伴って増大する精神的苦痛は、指針を踏まえて支払っている慰謝料の月10万円に含まれているとの見解も示した。
 東電が和解案を受け入れた場合、単純計算で年90億円以上の支払いが新たに生じる。


 8月、センターは「和解案は個別事情を考慮したもの。中間指針とも懸け離れていない」と文書で正当性を訴えたが、東電は再び受け入れを拒んだ。5カ月後には「理由なく拒否している」として受諾を勧告したが、応じなかった。勧告に法的拘束力はない。今月17日には2回目の勧告を出した。町も馬場有町長(67)らが要望活動を行い、東電に理解を求めている。
 東電は25年12月にまとめた新・総合特別事業計画(再建計画)で、原子力損害賠償「3つの誓い」の1つに「和解仲介案の尊重」を掲げている。にもかかわらず5回にわたって拒否した。理由は何か。
 「基本的に和解案を尊重する立場だ。ただ、平等性や公平性を欠く案は受諾できない」。東電福島復興本社福島広報部は最初の拒否から1年半がたった今も同じ主張を繰り返す。

カテゴリー:賠償の底流-東京電力福島第一原発事故

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