東日本大震災

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古里再生交流記 ふくしま復興大使国内訪問 愛知・三重 息づく「改善の精神」

永島主任係長の説明を受け、燃料電池自動車の構造を学ぶ復興大使の(左から)高橋さん、佐藤君

 福島民報社が委嘱した「ふくしま復興大使」の中学、高校生2人は11日、愛知県豊田市のトヨタ自動車を訪問し、世界をリードする企業の「改善の精神」に触れた。12日には三重県多気(たき)町の高校生レストラン「まごの店」を訪ね、夢に挑戦する相可(おうか)高の生徒と交流した。

■人が支えるトヨタの技術

 トヨタ自動車本社の住所は豊田市トヨタ町一。名古屋市の東に隣接する豊田市は、社名が地名になった人口約42万2000人の企業城下町だ。約7万人に及ぶグループ社員のうち、約3万人が市内に住んでいる。
 復興大使は本社に近いトヨタ会館を訪れ、社会貢献推進部企業PR室の永島均主任係長(57)から環境対応の技術などを聞いた。館内には9日に発売された主力ハイブリッド車(HV)の新型プリウス、「究極のエコカー」と呼ばれる燃料電池自動車MIRAI(ミライ)が展示されていた。
 ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせて走るHV、水素を燃料として走行中に水しか出さない燃料電池自動車。いずれも社員の提案を生かしながら改善を重ね、環境に優しい車造りを追求し続ける。新型プリウスの燃費は世界最高水準の1リットル当たり40.8キロにまで達した。
 年間26万人が見学するトヨタ会館。ロボットが定時にバイオリンを奏で、車だけではない技術の目覚ましい進歩を感じさせる。
 復興大使は元町工場も見学した。昭和34年にアジア初の乗用車生産工場として操業を始め、現在はクラウンやレクサスGSなどの高級車を生産している。
 1台当たりの部品は約400点に上り、塗装は4回行う。溶接など生産過程の多くは自動化されているが、ハンドルや座席の組み付けなど、安全面で重要な部分は手作業だ。
 代表標語は「よい品よい考(かんがえ)」。元町工場工務部工場企画室の南隆雄主幹(52)は「不良品を出さないよう、従業員が考えた改善点を積極的に採用し、チーム力で課題を乗り越えている」と説明する。織機会社から自動車生産に乗り出し、世界一の販売台数を誇る企業に上り詰めても、「人」が輝く企業風土は変わらない。

復興支援続ける
 トヨタ自動車は東日本大震災発生後、さまざまな支援活動を続けている。社員食堂には本県産食材を使った特別メニューがある。

■調理や接客生徒が担う 三重 相可高の「まごの店」

 相可高の「まごの店」は食物調理科の調理実習を目的として、「五桂池(ごかつらいけ)ふるさとの村」の一画に建てられた。生徒が調理、接客、会計など全てを担い、テレビドラマのモデルになった。
 「5名さまご案内します」「いらっしゃいませ」。生徒たちは元気な声を響かせ、順番待ちの客を迎えた。調理場は客席から見える位置にあり、テレビ画面でも生徒が腕を振るう様子を見ることができる。
 復興大使は一番人気の「花御膳」(1300円)を注文した。天ぷら、煮物、あえ物、だし巻き卵など七品に、ご飯が付く。だしをしっかりと利かせた上品な味わいが特徴。吉川秀明教頭(52)は「あらゆる和食の基本を生かしている」と説明する。
 店は土、日曜日と祝日にクラブ活動として営業している。売上金は材料費や光熱費などに充て、生徒の報酬はゼロ。月曜日から水曜日は各種の料理コンテストに向けた練習、木、金曜日は店の仕込みを行う。生徒は「無休」だが、3年生の北角大輝君(18)は「料理が好きだから続けられる」、2年生の川口優希穂さん(17)は「料理を学びたくて入学した。根性だけは負けない」と話す。優れた料理人になる夢が生徒の活力を支えている。
 地元の住民、企業、行政が生徒たちを物心両面で応援し続けており、「地域全体が活動を支えてくれている」と藤田曜久校長(57)。1年生の小谷懐都(かいと)君(15)は「おいしかったという言葉が支えになっている」とほほ笑んだ。

伊勢志摩サミット会場周辺など訪問
 復興大使は来年5月に開かれる伊勢志摩サミットの会場周辺、20年ごとに社殿を建て替える式年遷宮の主要儀式が平成25年に行われた伊勢神宮も訪れた。

■福島に伝えたいこと 明るい未来へ古里を大切に

トヨタ自動車広報部メディアリレーション室名古屋広報 グループ長 築城健仁さん51
 トヨタの自動車生産は、何もない原野のような地でゼロから始まった。今はグループで年間1000万台以上を販売し、海外にも拠点を持つグローバル企業に成長したが、原点の日本を大切にする企業精神は変わらない。復興大使は古里を大切にする心を持ち続け、福島の明るい未来に向けて頑張ってほしい。

■訪問活動を終えて(敬称略)

【川俣町】佐藤史喜(13) 川俣中2年 何事にも挑戦する意欲湧く
 トヨタの最先端技術を見て驚いた。地球環境や安全性について真剣に考えている。大企業も最初はゼロからの出発。何事にも挑戦する意欲が湧いた。相可高の生徒からは、好きなことを頑張り抜く姿勢を学んだ。

【猪苗代町】高橋星那(16) 葵高1年 最善尽くす社員の姿勢学ぶ
 トヨタの社員から「各人が最善を尽くす」という姿勢を学んだ。みんなが地球規模の問題を考えていて、1人1人が認識することが改善につながると感じた。調理技術を磨く相可高生からは、困難に挑む勇気をもらった。

吉川教頭(左)の説明で相可高生の活動を見学する復興大使

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