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(10)商品の物語伝える

郡山市のオフィスで、パッケージデザインを担当したジャムの瓶詰を手にする馬場

■郡山市コンセプト・ヴィレッジ社長 馬場大治さん 28 (上)

 郡山市富田町のマンションの一室。小さなオフィスには大きな夢が詰まっている。
 県産農産物の商品開発やパッケージデザインなどを手掛けるコンセプト・ヴィレッジ。社長を務める馬場大治(だいち)(28)たった一人の会社だ。東京電力福島第一原発事故の風評に苦しむ農家の力になりたいと起業した。食材にこだわった弁当を東京都内の駅や羽田空港で販売。福島の食の魅力を発信し続けている。
 生産者と消費者をつなぐ新たな分野を開拓したとして昨年12月、県内の優れたベンチャー企業をたたえる県の「ふくしまベンチャーアワード2015」最優秀賞に輝いた。

 郡山市に生まれ、日大東北高、上智大を卒業した。東日本大震災が起きたのは、都内の広告代理店に勤務して一年ほどたった時だった。
 「いつかは古里のために」という思いを抱きつつ過ごした。転機となったのは震災の翌年、帰省した際に参加した復興をテーマとしたワークショップだった。同世代の若者が故郷を思い、行動する姿に触発された。「いつかじゃなく今すぐ」と決断、郡山に戻った。
 自分に何ができるか。市内田村町で農業を営んでいた祖父母をふと、思い出した。花や野菜を育てていた畑で1、2歳のころから遊んだ。収穫を体験した。郡山総合体育館の駐車場を会場に毎週日曜日に開かれる朝市で、販売も手伝った。
 原発事故で県内農家は苦境に立たされていると聞く。「農家のために行動しよう」。じいちゃん、ばあちゃんを思い誓った。

 福島のコメや野菜を、どうやって売り込んでいくのか。朝市での客とのやりとりを思い出した。
 500円の値札を付けた菊の花束。「その値段は高いね」と言われた。午前5時からの朝市に一番いい状態で並べるため、2時に起きて収穫してきた。情熱を持って丁寧に育てている。そう説明すると、「それなら500円はむしろ安いよ」と買ってくれた。「こだわりや苦労、工夫を伝えれば、商品の価値が上がる」と学んだ。
 農産物が生産現場から店頭に並ぶまでの「物語」を消費者に伝える。その懸け橋になる。探していた「自分にしかできない仕事」が見つかった気がした。(文中敬称略)

※ふくしまベンチャーアワード
 県が新たな産業創出を目指し、平成25年に創設した。起業意欲や独創性・新規性、成長の可能性などを審査する。27年は東邦銀行が共催し32点の応募があった。

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