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(15)知恵出し合い前へ

南会津冒険王プロジェクトで地元の自然の魅力を伝える向後(左)

■南会津町ひのきスポーツクラブ 向後隼平さん 30 (下)

 果たして事業を続けていけるのか。南会津町田島地域のNPO法人ひのきスポーツクラブのマネジャーを務める向後隼平(こうご・じゅんぺい)(30)は頭を抱えた。
 中・浜通りの親子を招き、自然の中で伸び伸び遊んでもらう南会津冒険王プロジェクト。平成24年夏に復興支援の一環で初めて企画し、参加者から感謝の言葉が届いた。翌年も公益社団法人の補助事業などを活用し、予算を確保する見通しはついた。しかし、前年運営に力を貸してくれた大学生からの協力は見込めなかった。
 スポーツクラブのスタッフは5人。前年並みに30人ほどの参加があったら、うまく対応できないかもしれない。不安ばかり募った。

 町内には急速に進む少子高齢化に対する危機感が広がっていた。「外で遊ぶ子どもの姿が見えない」「このままでは地域の伝統、文化が途絶えてしまう」
 向後は町内の農家や婦人会に、冒険王プロジェクト運営への協力を頼もうと考えた。毎年、数日間でも子どもたちがやって来れば、住民の気持ちに張り合いが出るのではないか。煩わしく思われないだろうかという心配もあったが、すぐに吹き飛んだ。「子どもの声が聞こえず寂しかったんだよ」。頭を下げて回った相手、誰もが快く引き受けてくれた。
 外部との交流を地域づくりに生かしていく基礎ができた。

 冒険王プロジェクトは田島地域の夏のイベントとして定着した。
 川遊びなどの自然体験をはじめ、郷土料理作りや農作業体験などメニューは充実している。もち米を笹で包む笹巻き、コメをこねてエゴマみそを付けて焼くしんごろう-。実演する女性は、わが子のように子どもたちをやさしく見詰める。「おばあちゃんの育てた野菜、おいしそう」。そう言われた農家の人は以前にも増して生き生きと畑に向かうようになったという。
 地元で民宿台鞍荘を営む湯田哲(59)は「原発事故の風評で町を訪れる観光客が減っている中、子どもとの交流によって元気をもらっている」と喜ぶ。
 スポーツクラブのマネジャーとなって間もなく丸4年。向後は「過疎や少子化など地域が抱える問題は簡単に解決できない。それでも、みんなで知恵を出し合えば一歩ずつ前に進める」と信じている。(文中敬称略)

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