東京電力福島第一原発事故からの地域農業再生を目指し、南相馬市原町区の下太田工業団地に建設されたトマトの大規模工場「南相馬トマト菜園」の開所式が20日、行われた。土を使わない環境制御型養液栽培で、震災前の同市のトマト生産量の約半分に当たる年間660トンを出荷する計画。ブランド名は未来の福島をつくる人材への期待を込めて「あすびとトマト」を検討している。
同市小高区出身で元東電執行役員の半谷栄寿社長が「南相馬復興アグリ株式会社」を設立し、国の津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金を受けて建設した。総事業費は約11億円。
昨年2月に着工、11月に完成し、12月に苗を植え付けた。約1万5000平方メートルの温室は、夏は35度以下、冬は20度以上に管理し、年間を通して中玉トマト2万8000株を育てる。
技術支援を受けたカゴメを通しヨークベニマルなどで販売する。3月に初出荷し、年間売上高の目標は2億円。地元などから正社員5人、パート45人を雇用した。
式には来賓、従業員ら約100人が出席。半谷社長は「農業経営にたけた人材をここから地域に輩出し、復興・成長に貢献したい。消費者に選ばれる菜園にしたい」と抱負を述べた。畠利行副知事、桜井勝延市長、平田武市議会議長が祝辞を述べた。
出席者は明るい日差しの中、延々と苗が並ぶ工場を視察し、育成法などについて説明を聞いた。
(カテゴリー:福島第一原発事故)