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「賠償の底流-東京電力福島第一原発事故」アーカイブ

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第7部 ADR・訴訟 地域事情(42) 先例準じた解決を 伊達富成 和解案示されず焦燥

休園している富成幼稚園。地域住民は地域ににぎやかな声が復活するのを望んでいる

 伊達市保原町富成地区(高成田、富沢地区)の324世帯・1171人は昨年3月、原子力損害賠償紛争解決センターに裁判外紛争解決手続き(ADR)を申し立てた。いずれも東京電力福島第一原発事故に伴う賠償対象となる特定避難勧奨地点に指定されなかった地域の住民だ。
 精神的損害に対し、平成23年3月11日から和解成立の日まで1人月10万円の支払いを東電に求めている。富成地区に隣接する同市霊山町小国地区の同じ非指定世帯の住民は精神的損害賠償を求めたADRで既に東電と和解し、23年6月末から25年3月末まで1人月7万円を受けた。
 富成地区の弁護団事務局長を務める倉持恵弁護士(34)=福島市=は「富成、小国両地区の放射線量に大差はなく、原発事故で受けた影響も似ている」と指摘し、小国地区の実績を参考に和解案が示されるとみる。しかし、和解案は申し立てから1年近くが経過しても提示されず、住民はいら立ちを募らせる。

 政府は23年11月までに、放射線量が比較的高い世帯を特定避難勧奨地点に指定し、退避を促した。富成地区は約350世帯のうちの10世帯、小国地区は約430世帯のうちの90世帯が該当した。
 両地区内では放射線に対する不安が若い世代を中心に広がり、勧奨地点に指定されていない世帯も次々と地元を離れた。富成地区にある富成幼稚園では、原発事故が起きるまで3歳から5歳までの園児19人の声が響き渡っていた。しかし、原発事故で園児が減少し、26年4月に休園に追い込まれた。
 勧奨地点はいずれも24年12月に解除された。ただ、指定世帯の住民に対しては、精神的苦痛を与えたとして25年3月まで東電から1人月10万円の賠償金が支払われた。「苦痛は勧奨地点の住民と同じなのに...」。賠償金を受けられない近隣住民からは同様の対応を求める声が広がった。

 富成地区のADRの呼び掛け人の一人で、地区内で農業を営む菅野益芳さん(64)は「われわれには苦痛を理解されないという別の苦しみもある」と訴える。
 小国地区は申し立てから約10カ月後で和解案が示されている。「申立人の数も含め、事情はほぼ同じなのに、いまだに提示されないのはなぜなのか。納得のいく説明がほしい」。菅野さんは住民の思いを代弁する。
   ◇   ◇
 原発事故から間もなく丸5年になる。賠償の枠組みから外れた住民はADRに救いを求める。ADRか訴訟か、解決の道を模索する動きもある。賠償制度は十分なのか。道筋は整っているのか。制度のはざまで苦悩する住民の動きを追う。

カテゴリー:賠償の底流-東京電力福島第一原発事故

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