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「賠償の底流-東京電力福島第一原発事故」アーカイブ

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第7部 ADR・訴訟 地域事情(43) 和解案は個別判断 審理の透明性確保を

自宅近くの畑を回る菅野さん。原発事故後、耕作放棄地が増加した

 伊達市保原町富成地区の住民が東京電力福島第一原発事故に伴う精神的損害賠償を求めた裁判外紛争解決手続き(ADR)で、原子力損害賠償紛争解決センターは「地域の事情に応じた解決を目指している。原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)の中間指針なども踏まえて合意に導きたい」との説明に終始する。
 住民からは既に和解が成立した同市霊山町小国地区の事例を参考に迅速な手続きを求める声が上がっている。しかし、先例にとらわれず、申立人と東電の双方から事情を聴き、丁重に対応する姿勢を強調する。
 原賠審は東電が賠償すべき内容を指針にまとめた。ADRで扱う問題は、指針に記されていない損害や東電との直接交渉で提示額に納得できない損害が中心となる。ただ、損害の状況が多岐にわたるため、類型化するのは難しい。先例を踏襲できない背景には、指針のように統一的な基準を設けるのが困難という事情がある。

 東電は、富成地区に先行する形でADRを起こした小国地区の住民と和解した際、「科学的見地から健康被害は認められず、本来は不安感に対する賠償は受諾できない。しかし、(特定避難勧奨地点に)指定された世帯と極めて近接している点が特殊事情」と賠償金の支払いに応じた。
 富成地区の住民らは、この見解が東電側の和解案受諾の基準の一つになり得るとみる。小国地区と同様に勧奨地点の近隣に住み続けるため、自分たちも該当するとの判断からだ。
 しかし、東電もセンターと同じく基本的に個別の損害ごとに和解案の受け入れを判断する考え。富成地区への対応については「個別のADRに関わる内容は答えられない」(福島復興本社福島広報部)としている。

 「住民の混乱は繰り返したくない」。申立人の一人、農業菅野益芳さん(64)は、平成23年11月に政府が勧奨地点を指定した際の対応を振り返る。避難の目安を積算線量で年間20ミリシーベルトとしたが、指定の基準を明確に示さず、非指定世帯の住民から「勧奨地点と放射線量が変わらないのに、なぜ外れたのか」との訴えが相次いだ。政府の担当者は経緯の説明を避けたという。
 ADRの審理の経過なども原則非公表だ。プライバシー保護のため、個別の内容は明らかにされない。「住民が納得できるよう和解案の基準と審理の透明性が必要ではないか」。菅野さんは率直な思いを口にした。

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